【JX通信社独自調査】ワクチン接種加速で自治体の負担増「体調不良で入院」「離職者」も

JX通信社は、今年4月に続き第3回となる新型コロナウイルスワクチン接種状況に関するアンケートを、全国の市区町村1,741自治体に対して実施しました。2021年7月27日(火)現在、670自治体から回答がありました。

前回の結果
https://fastalert.jp/column/interview/municipality-vaccination

アンケートの結果、接種ペースが大幅に加速する裏で、関連業務に携わる自治体職員に重い負荷がかかっていることが明らかになりました。担当職員の残業時間が「“過労死ライン”とされる月80時間を超える」と回答した自治体が半数の300近くに上ったほか、「体調不良で入院者が出た」「離職者が出た」という自治体もありました。

菅義偉首相が6月上旬に表明した希望者全員の11月までの接種完了については、可能とした自治体が全体の約80%を占めた一方、足元ではワクチン供給が不足する自治体が出てきており、「今後の接種めどが立たない」などと先行きを不安視する声も多く聞かれました。

また、64歳以下の一般接種で、自治体が地域の実情に合わせて独自に設けることができる優先接種枠については、6割を超える自治体が設けていることが分かりました。保育士や学校教諭など、子どもと接する機会が多い職業従事者への接種を優先する自治体が目立ちました。

それでは、アンケート結果を紹介していきます。

ワクチン接種の終了目処は?

菅義偉首相は6月9日、新型コロナウイルスワクチンの接種について「10月から11月にかけて必要な国民には全て終えることを実現したい」と明言。この間、ワクチン供給が軌道に乗り出し、7月26日現在で、65歳以上の高齢者の84.2%が1回目の接種を終え、総人口では36.4%が1回目の接種を終えています。

まず、各自治体に10〜11月にかけて接種が完了できるかどうか聞きました。

結果、79.9%が「終えられる」と回答。すでに「希望する住民全員の接種を終えている」と答えた自治体も3%あり、「終えられない」は20%に満たない結果となりました。

接種完了を見込む具体的な時期については、最も多かった回答は「11月」、次いで「10月」、「9月」と続きます。

また、これらの設問への回答を自治体の規模ごとに集計したところ、町村など人口が少ない小規模な自治体と、政令指定都市や特別区といった大規模な自治体では「11月末までの接種完了が可能」とする割合が大きく、逆に10万人前後の人口を抱える中規模な自治体では「不可能」とする割合が大きい傾向も見られました。

接種終了時期についても、政令市・特別区や町村ではほぼすべての自治体がワクチン接種が「年内に終わる」としていたのに対し、中核市以下の規模の市では約10%がワクチン接種が「年内には終わらない」と回答しています。

小規模で小回りの効く自治体、医療資源などが充実しワクチンが優先的に配分される大規模自治体ではワクチン接種を加速することができているのに対し、中規模自治体ではいわば「中途半端」な立場に置かれ、接種機会の確保が難しいところも出てきていると考えられます。

一方で、足元ではワクチン供給が不足している自治体が出てきており、今後の見通しが不透明であることから、無回答や「不明」と回答する自治体も一定数あり、政府に改善を求める声も聞かれました。

  • ワクチンの供給が減り、接種日と接種数を見直すこととなり、予約受付も一時休止となっている。ワクチンの供給の見通しが立たず接種計画も立てられない。
  •  大規模接種会場で使用するモデルナ製のワクチンが不足し、ファイザー製ワクチンで補うとの方針が示されるなど、ワクチンの供給状況の悪化により、接種計画に大きな影響が出ている。
  • ここにきてワクチンの供給不足で、会場数を半分以下に減らさないといけなくなったため、再度計画の立て直しが必要となっている。ワクチンさえ希望どおりの供給があれば、このような混乱はなく、接種完了できていたと思う。
  • 高齢者接種を進めた段階では、ワクチンも希望通り供給されたが、8月以降のファイザー社ワクチンの供給が激変し、減速せざるを得ない状況となっている
  • 7月以降は、ワクチン供給が大幅に減る見通しが示されたことから、接種スピードが減速するばかりか、接種計画が立てられない事態となっている。

接種ペース加速は国の”無理強い”?

6月以降、ワクチンの接種ペースが急加速した背景には何があるのでしょうか。各自治体に自由回答を募りました。

  • 大規模接種、職域接種の開始
  • 当初、慣れるまでの間、アナフィラキシーへの対応等、懸念事項が多く、接種人数を少ない状況からスタートしていた。回を重ねるたびに対応可能であることが把握でき徐々にスピードアップした
  • ワクチンに対する市民理解が進んだ。医療機関の協力、集団接種会場の増設、医療従事者等接種に携わる人的資源の確保等、接種体制が整った

多くの自治体が、大規模接種や職域接種など接種の受け皿が増えたこと、接種体制が徐々に整い慣れてきたことなどが要因と回答。ワクチン接種に対する市民の理解が進んだとの指摘も見られました。

方、国から接種ペースを上げるよう促す指示や、度重なる方針転換など、接種ペースの加速は、”無理強い”の結果にすぎないとの批判的な意見も複数寄せられました。

  • 大臣が無理矢理実施させたから
  • 政府が発表してしまった以上、実行しないと自治体の責任になるため
  • 菅総理の発信から世論が一気に加速したことが背景にあるように思える。しかしながら、現場の実情や地域事情は顧みない発信のため、常に混乱の中、日々の業務を行っており、一向に安定しない。河野大臣の思いついたような発信もやめていただきたい

接種ペースが大幅に加速する裏で、現場は大きく混乱している様子がうかがえます。

現場職員の負担が増している

実際に、ワクチン業務に携わる自治体職員の負担増について尋ねたところ、「負担が大きく増している」と回答した自治体は69%、「負担が多少増している」と回答した自治体も20%を占め、合わせると9割近い自治体が負担増を訴えていることが分かりました。

では、具体的にどのような負担が増えたのでしょうか。

次の選択肢を提示して聞きました(複数回答も可)。

ア 担当職員の半数以上が月80時間超の残業をしている
イ 他の住民サービスに支障が出ている
ウ 離職者が出ている
エ 休職者が出ている
オ その他(自由回答)

結果、回答全体の半数に迫る300近い自治体が、「担当職員の半数以上が(過労死ラインとされる)月80時間超の残業をしている」を選択。「他の住民サービスに支障が出ている」を選択した自治体も4割近くに上り、

  • 本来業務である成人保健や母子保健等の業務に支障が出ている
  • がん検診・特定健診の集団検診を中止した

などといった声が寄せられました。

また、大規模接種や職域接種など接種の受け皿が増えたことで、

  • 接種済みと未接種の住民の状況把握が難しくなった
  • 無断キャンセルを含むキャンセル件数が増えた

といった声も聞かれました。

より深刻な回答では、「離職者」や「休職者」が出ているとの自治体も約30ありました。

  • 体調不良で入院した者が出ている
  • 精神的な負担感が非常に大きく、体調を崩す限界ギリギリというところで、職員の責任感によってのみ業務を遂行できている
  • 各自治体の取り組みがメディアを通じて広がり、競争感を煽られ、市民からの苦情や問合せに長時間対応することが増えており、厳しい言葉に日々職員が疲弊している

現場が相当逼迫している様子がうかがえます。ワクチン関連業務に従事する自治体職員の心身面のケアは喫緊の課題と言えそうです。

自治体独自の優先接種枠は?

最後に、国が優先接種対象としている(1)医療従事者(2)65歳以上の高齢者(3)基礎疾患のある人や高齢者施設の従事者ーーとは別に、自治体が独自に優先接種枠を設けているかどうかや、具体的な優先接種対象者について尋ねました。

結果、6割以上の自治体が独自の優先接種枠を設けていると回答しました。また、優先接種の対象として最も多かった回答は、「保育園・幼稚園等職員」や「学校教諭」など、日頃、子どもと接する機会が多い職種の従事者でした。このほか、「中学3年生、高校3年生」といった受験生を優先対象とする自治体や、「旅館」「タクシードライバー」など観光業従事者を優先するという自治体もありました。

アンケート結果の詳細

アンケート回収期間:2021年6月21日〜2021年7月21日
アンケート対象:全国1,741自治体
アンケート回答:670自治体

※本調査の詳細なデータ、内訳、自由回答を報道に活用下さるメディア・報道関係者は、info@jxpress.net(広報担当:和泉)までお問い合わせ下さい。

※本内容は引用可能です。その際は「NewsDigest/JX通信社」からの引用であることを明記してください。

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