
地震が停電を発生させる理由と復旧時にも注意が必要な通電火災
目次[非表示]
- 1.地震発生時に企業が受けるおそれがある深刻なリスク
- 2.地震に伴って停電が発生する理由
- 3.停電復旧時に発生する通電火災
- 4.企業における停電対策
- 4.1.BCP・防災マニュアルを策定しておく
- 4.2.防災グッズを備蓄しておく
- 4.3.感震ブレーカーを設置する
- 4.4.UPS(無停電電源装置)を活用する
- 5.リスク情報を早期把握できるFASTALERT
- 6.最後に
- 7.関連お役立ち資料集
地震発生時は停電が伴うことも珍しくないため、あらかじめ停電を想定した地震対策を導入しておく必要がありますが、これから地震対策に注力しようと考えている企業担当者の中には地震に伴って、なぜ停電が発生しているのか分からずに困っている方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では地震が停電を招く理由や復旧するまでの期間、電力復旧時に発生するおそれがある通電火災などを説明していきます。
この記事を読むことで地震と停電の関係を把握できるので、ぜひ参考にしてください。
地震発生時に企業が受けるおそれがある深刻なリスク
日本列島は、北米プレート・太平洋プレート・フィリピン海プレート・ユーラシアプレートの境界の真上に位置しているために、世界有数の地震大国となっており、内閣府の「1 災害を受けやすい日本の国土」で説明されているように世界で発生したマグニチュード6以上の地震の2割が日本で起きているのです。
日本では頻繁に発生している地震ですが、十分な対策を導入していない状態で地震に巻き込まれた場合は、事業に以下の深刻な被害を受けてしまうおそれがあります。
- オフィスや工場、設備、機器などが損傷してしまうことで休業を余儀なくされる
- 地震による揺れや液状化現象でオフィスや工場などが倒壊してしまう
- 倒壊した建築物の瓦礫や道路の損傷などによってサプライチェーンが途絶してしまう
- 休業やサプライチェーンの途絶によって、納期遅延やそれに伴うペナルティ、顧客離れが発生してしまう
- 十分な地震対策を導入していなかったことに対するステークホルダーからの批判と信用低下 など
状況によっては休業で利益が出ない中で莫大な復旧コストを要することで、復旧の目処が立たずに倒産に繋がってしまうおそれがあるため、平時のうちに可能な限りの地震対策を導入しておくことが重要です。
地震に伴って停電が発生する理由
過去の震災で複数回確認されているように、地震が発生した場合、停電が引き起こされてしまう危険性がありますが、なぜ地震に伴って停電が発生してしまうのか分からない方も中にはいるのではないでしょうか。
停電が発生する原因には様々ですが、地震に限っては、揺れによる建築物の倒壊や液状化現象で電柱・電線や地中にあるケーブルなどが損傷したり、発電所の自動停止が発生したりすると、停電が引き起こされてしまいます。
2018年の北海道胆振東部地震では、震度7の地震に伴う土砂災害や液状化現象、建築物の全半壊などによって、死者43名、重軽傷者782人が発生するなどの甚大な被害が発生しました。
さらにこの地震では北海道で使用されている電力の半分以上を供給している最大規模である苫東厚真発電所でボイラー菅が損傷したことで自動停止し、連鎖的に他の発電所も※全系統崩壊したことで、北海道のほぼ全域である約295万戸で大規模な停電が発生してしまったのです。
復旧は約2日でほぼ完了しましたが、信号機が点灯しないことによるサプライチェーンの途絶やスーパーマーケットの商品不足、大手製造メーカーの工場の一時的な操業停止、ATMの停止などの大きな混乱を招きました。
※電力のバックアップ機能が作動せずに電力が供給できないまま、次々と発電所や発電機などが停止していく現象
地震に伴う停電が復旧する期間は状況によって異なる
地震に伴う停電が発生した場合は、電力設備などの被災状況や規模、復旧対応を行う電力会社の作業スピードによって復旧する期間が以下のように大きく異なります。
- 北海道胆振東部地震:約295万戸の復旧完了までに2日
- 熊本地震:約48万戸の復旧完了までに5日
- 東日本大震災の東北電力エリア:約466万戸の復旧完了までに3ヶ月
- 東日本大震災の東京電力エリア:約405万戸の復旧完了までに4日
地震による停電は数日間にわたって続くおそれがあり、事業継続に悪影響が出るだけでなく、停電に伴う断水や冷暖房が使えないことによる健康被害を受ける可能性があるため、事前に停電に対して備えておくことが重要です。
停電復旧時に発生する通電火災
地震による停電の復旧時も油断は禁物で、十分な対策をしていなければ、大規模な通電火災が発生してしまうおそれがあるため、注意しなければなりません。
通電火災とは、停電からの電力復旧時に発生する火災のことであり、倒れた暖房器具や損傷した電子機器が可燃物に触れている、損傷した電子機器が通電に伴ってショートしてしまう、などの理由によって発生します。
安全な避難場所へ避難中で周囲に誰もいない状況で通電火災が発生することが多く、初期消火が行われづらいために大規模な同時多発火災へ発展する傾向があり、2011年の東日本大震災では発生した110件の火災のうち、71件が通電火災でした。
さらに詳しく通電火災を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
企業における停電対策
地震などの災害発生に伴って、停電が引き起こされてしまうことは決して珍しくないため、地震と併せて停電対策も徹底しておく必要があります。
この章では、企業における主な地震発生時の停電対策を説明していくので、複合的な地震対策の導入を検討している企業担当者はぜひ参考にしてください。
BCP・防災マニュアルを策定しておく
地震による停電発生時に、すみやかに事業を継続できるようにあらかじめBCP・防災マニュアルを策定しておきましょう。
BCPとは、災害や事故などの企業におけるリスク発生時に事業への影響を最小限に抑えて、事業の継続または早期復旧を図るための計画のことであり、事前にリスク発生時に行う最善の対応を定めておくのが特徴です。
もしBCPや防災マニュアルを策定していない状態で災害などのリスクに巻き込まれた場合は、混乱によって的確な行動がすみやかにできず、被害が拡大してしまうおそれがあるため、事前に策定しておきましょう。
詳しくBCPを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
防災グッズを備蓄しておく
地震に伴って停電が発生し、避難生活を余儀なくされた場合に備えて、あらかじめ食糧などの防災グッズを備蓄しておきましょう。
一般的に水道やガスなどのライフラインの復旧と人命救助が落ち着くまでに3日程度かかると言われているものの、地震やそれに伴う停電状況によっては復旧対応と避難生活が長期化するおそれがあるため、3日分を最低限とし、1週間分以上の防災グッズを備蓄しておくことが望ましいです。
また停電発生時に、情報収集を行えるようにスマートフォンを充電するためのモバイルバッテリーやラジオ、乾電池なども用意しておきましょう。
企業に防災グッズの備蓄が求められている理由や防災グッズの種類を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
感震ブレーカーを設置する
停電復旧時の通電火災を防ぐための手段の1つとして、オフィスや工場にあらかじめ感震ブレーカーを設置しておきましょう。
感震ブレーカーとは、設定値以上の地震による揺れを感知した場合に自動的に分電盤のブレーカーを落として、電力の供給を停止する装置のことであり、電力復旧時の通電火災を防ぐことができます。
感震ブレーカーには揺れを感知した直後に電力を停止させるタイプと電力を停止するために数分間の猶予を持たせるタイプがありますが、即座に停止するタイプでは夜間にすみやかに避難できないおそれがあるため、懐中電灯などを用意するか、後者のタイプの感震ブレーカーを選ぶと良いでしょう。
UPS(無停電電源装置)を活用する
地震に伴って停電が発生した場合、デスクトップPCが突然シャットダウンすることで重要なデータの消失やハードディスクの故障などが起きてしまうおそれがあるため、UPSに接続しておきましょう。
UPSとは、停電などによって突然電力が途絶えた場合に、一定期間、電力を供給するための機器のことであり、停電発生時にデータの消失などを防ぎつつ、安全にデスクトップPCをシャットダウンできます。
ただし、長時間の電力の供給には向いていないため、停電発生時はデータなどを保存した上ですみやかにシャットダウンしましょう。
リスク情報を早期把握できるFASTALERT
災害発生時は、意思決定に基づいた初動対応をすみやかに開始するために、被害状況などの情報収集を行わなければなりません。
しかし、災害発生時はリソースが限られた状況の中で情報を精査しなければならず、場合によっては対応しきれないおそれがあり、これによって的確な対応ができない可能性があります。
この状況を解決するために自治体や企業では、AI情報収集サービス「FASTALERT」が活用されています。
FASTALERTは、自然災害・事故・事件など自治体や企業におけるリスクが発生した場合にAIが正誤を分析した上でほぼリアルタイムでサービス利用者に提供する仕組みです。
弊社ではFASTALERTの紹介資料やSNSで炎上が起きる理由など、企業や自治体の防災担当者が抱えるお悩みを解決するために防災に関する資料を幅広く用意しています。
詳しくご覧になりたい方は、「防災お役立ち資料」から資料をお気軽にダウンロードしてください。
最後に
もし地震が発生した場合、建築物の倒壊などの被害だけでなく、二次災害として大規模な停電が引き起こされてしまうリスクがあり、事業を守るためには停電も想定した複合的な地震対策を事前に導入しておく必要があります。
この記事を参考に地震における停電の理解を深めて、可能な限りの地震対策に取り組みましょう。