
小さいとは限らない地震における余震の脅威と余震が報道などで使われなくなった理由
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本震の後にやってくる場合が多い余震が発生すると、さらに被害が拡大してしまうおそれがあるので、被害を最小限に抑えるためには常に最新の防災情報を把握した上で的確な対応をする必要があります。
しかし、これから地震対策に取り組む担当者の中には、余震の大まかな意味は知っていてもどのように注意すれば良いのか分からない方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では余震の基礎知識や気象庁などで余震が使われなくなった理由、企業における主な地震対策などを説明していきます。
この記事を読むことで余震に備える上でのヒントが分かるので、地震対策を考えるためにもぜひ参考にしてください。
地震がもたらす事業への甚大な被害
地震大国の日本では頻繁に地震が発生していますが、状況によっては以下の被害によって事業継続を脅かされる事態に陥ってしまうおそれがあるため、平時のうちに可能な限りの対策に取り組んでおかなければなりません。
- 地震によってオフィスや設備、機器が損傷し、一時的な休業を余儀なくされてしまう
- サプライチェーンの途絶によって、供給と出荷ができなくなってしまう
- 休業やサプライチェーンの途絶によって、納期の遅延とそれに伴う契約上のペナルティが発生する
- 十分な地震対策をしていなかったことに対する顧客からの信用低下
- 長期にわたる休業とそれに伴う顧客離れによって、業績が悪化してしまう など
大規模な地震によって事業を立て直すための復旧コストが想定以上に膨れ上がった場合、最悪は復旧の目処が立たずに倒産へ繋がってしまうリスクがあるため、事業を守るために最善の対策を導入しておくことが重要です。
本震の後にやってくる余震の概要とそのメカニズム
地震における余震とは、本震の後で発生する規模の小さい傾向のある地震のことであり、通常は時間が経つにつれて余震の数は減少していきますが、余震が発生する期間は本震の大きさに比例するため、本震が大きければ余震も長くほか、本震と同規模の余震が発生すするケースもあります。
気象庁の「大地震後の地震活動(余震等)について」で説明されているように、大規模な地震が発生した場合は、その後も何年も余震が続いてしまうケースもあり、1995年の阪神・淡路大震災を引き起こした震度7の兵庫県南部地震による余震は2014年まで、と約20年間にわたって確認されていました。
海洋プレートと大陸プレートが押し寄せたり、沈み込んだりすることでひずみが蓄積され、やがて限界に達すると地震が発生しますが、1度ではひずみがリセットされないために余震という形で本震後にひずみが解消されていきます。
本震によって地域一帯が深刻な被害を受けた後に余震が発生すると、さらに被害が拡大してしまうおそれがあるため、余震に関する防災情報を確認した上で的確な防災行動の準備をしておくことが重要です。
地震における前震・本震と3種類の発生パターン
最初に発生する規模の大きい地震を本震、本震の前に確認された小さな地震を前震、本震後に繰り返し発生する小さな地震を余震と言い、気象庁の「大地震後の地震活動(余震等)について」で説明さているように、地震の発生パターンに応じて、本震—余震型、前震—本震—余震、突出した地震が確認できない群発的な地震活動型のいずれかに分類されています。
これらの発生パターンは、地震直後には区別がつかないために判断することはできず、地震活動が落ち着いてからいずれかに分類されます。
気象庁などで「余震」が使われなくなった理由
前述したように地震は前震・本震・余震に当てはめた上で発生パターンを分析しているものの、2016年に起きた熊本地震ではこの判定条件に大きな課題があることが判明しました。
熊本地震では同年4月14日に最大震度7の大きな揺れが発生し、その後も震度6弱・6強の地震が翌日にわたって続き、当初は最大震度7を本震、震度6弱・6強を余震としていましたが、予想とは裏腹に16日に最大震度7の地震が再び発生したことで、混乱を招いたため、気象庁は最初の揺れを前震、16日の震度7の地震を本震と分類し直したのです。
地震調査研究推進本部地震調査委員会が発表する「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方」で説明されているように「余震」という言葉を使うと本震よりも規模の小さい地震であることをイメージさせかねないという課題がこの熊本地震によって明らかになりました。
そのため、気象庁では防災情報などで余震や余震確率を廃止し、以下の防災上の呼びかけにおける変更に基づいて、「同程度の規模の地震に注意」や「地震活動」などの表現を用いるようになったのです。
- 地震の規模を表すマグニチュードよりも揺れの大きさを表す震度を使う
- 誤解を招く可能性のある「余震」ではなく、「地震」という言葉を使う
- 震源の位置によっては最初に地震と同等かそれ以上の揺れの地震が発生する場合もあることを伝える
これを受けて自治体や報道の発表でも現在では「余震」は使われなくなっているため、地震発生時の防災情報を調べる際は、注意しましょう。
企業における主な地震対策
地震が発生した際に十分な対策を導入できていなければ、状況によってはその後の事業継続に壊滅的な被害を受けてしまうおそれがありますが、どのような地震対策に取り組んでおけば良いのでしょうか。
この章では、企業における主な地震対策を説明していくので、ぜひ読み進めてください。
BCP・防災マニュアルを策定しておく
地震から企業を可能な限り守るために、まずはあらかじめBCP・防災マニュアルを策定しておきましょう。
BCPとは、災害や事故などの企業におけるリスク発生時にその被害を最小限に抑えて、事業の継続または早期復旧を図るための計画のことであり、事前にリスク発生時に行う最善と考えられる対応を定めておくのが特徴です。
BCPと防災マニュアルのいずれも定めていない状態でリスクが発生した場合は、混乱によって的確な判断ができずに被害が拡大してしまうおそれがあるため、平時のうちに定めておくと良いでしょう。
詳しくBCPを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
防災グッズを備蓄しておく
大規模な地震によって避難生活を余儀なくされた場合に備えて、社員が安全に過ごせるように事前に防災グッズを備蓄しておきましょう。
一般的に電気・水道・ガスのライフラインの復旧や人命救助が落ち着くまでに3日程度かかると言われているものの、大規模な地震が発生した場合は避難生活が長期化してしまうおそれがあるため、1週間分以上の防災グッズを備蓄しておくことが望ましいです。
企業が防災グッズを備蓄しておくべき法的な理由や主な防災グッズの種類を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
オフィス内に安全対策を施す
東京消防庁の「なぜ家具類の転倒・落下・移動防止対策が必要なの?」でも説明されていますが、近年における地震の負傷原因の30〜50%が家具の転倒・落下・移動であり、高層階に比例して地震による揺れが大きくなる傾向があるため、平時のうちに以下の安全対策をオフィスに施しておくことが望ましいです。
- オフィス家具をなるべく壁につけて、L字金具などの耐震器具で固定する
- 避難経路付近にオフィス家具など避難の邪魔になる物を置かない
- 収容物の飛び出しを防ぐために耐震ラッチがついたオフィス家具を選ぶ
- 中央に置くオフィス家具は下敷きになることを防ぐために腰までの高さにする など
今回は簡易的な説明となりましたが、オフィス家具の固定方法などを詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ハザードマップを確認する
大規模な地震が発生した場合は、オフィス以外の別の安全な場所へ避難しなければならない状況に陥るケースもあるので、的確な防災行動をするためにもあらかじめハザードマップを確認しておきましょう。
ハザードマップとは、災害履歴に基づいて、災害発生時の状況や被災する範囲、安全な避難場所などを記載した地図のことであり、地震や水害など災害の種類別に国土交通省や自治体のHPで公開されています。
しかし、災害は常に想定外の事態が発生し、安全とされていた場所も被災してしまう場合もあるため、ハザードマップで複数の避難場所を選んだ上で1つの参考にとどめておくと良いでしょう。
リスク情報を早期把握できるFASTALERT
災害発生時は、意思決定に基づいた初動対応をすみやかに開始するために、被害状況などの情報収集を行わなければなりません。
しかし、災害発生時はリソースが限られた状況の中で情報を精査しなければならず、場合によっては対応しきれないおそれがあり、これによって的確な対応ができない可能性があります。
この状況を解決するために自治体や企業では、AI情報収集サービス「FASTALERT」が活用されています。
FASTALERTは、自然災害・事故・事件など自治体や企業におけるリスクが発生した場合にAIが正誤を分析した上でほぼリアルタイムでサービス利用者に提供する仕組みです。
弊社ではFASTALERTの紹介資料やSNSで炎上が起きる理由など、企業や自治体の防災担当者が抱えるお悩みを解決するために防災に関する資料を幅広く用意しています。
詳しくご覧になりたい方は、「防災お役立ち資料」から資料をお気軽にダウンロードしてください。
最後に
本震の後で発生する余震は規模が小さい傾向があるものの、場合によっては本震と同規模の揺れが起きてしまうこともこれまで確認されているため、油断は禁物であり、防災情報に基づいて的確な判断をしなければなりません。
この記事を参考に企業を地震から守るために、平時のうちに可能な限りの最善と考えられる地震対策を導入しておきましょう。