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防災意識の向上につながるNewsDigestの「精密体感震度」を体感してみよう

先日、当社の速報ニュースアプリ「NewsDigest」で、細かな地域ごとの地震の揺れの体感をユーザーから収集してリアルタイムに表示・共有する「精密体感震度」機能を リリースしました。
詳細:震度計では捉えきれない細かな地震の揺れをシェアする「精密体感震度」機能 の提供を NewsDigest で開始

本日は『防災の日』ということで、「精密体感震度」を監修した慶應義塾大学の大木聖子 准教授が「地震の豆知識」と「体感震度」をわかりやすく説明します。

慶應義塾大学環境情報学部 大木聖子 准教授ご紹介

慶應義塾大学環境情報学部准教授。専門は地震学・災害情報・防災教育等。高校1年生の時に起こった阪神・淡路大震災を機に地震学を志す。2001年北海道大学理学部地球惑星科学科卒業。2006年東京大学大学院理学系研究科にて博士号を取得後、カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリプス海洋学研究所にて日本学術振興会海外特別研究員。2008年4月より東京大学地震研究所助教。2013年4月より現職。主な著書に『超巨大地震に迫る-日本列島で何が起きているのか』(纐纈一起教授との共著,NHK出版新書)、『地球の声に耳をすませて』(くもん出版)など。2012年9月『情熱大陸』、2014年11月朝日新聞『フロントランナー』、2016年4月朝日新聞『耕論』

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「いまの地震,震度3じゃない?え,2なの?」テレビに表示される震度情報に向かってこう思ったことはないでしょうか.あるいは,地震だと思ってテレビをつけたのに何も出てこない.
「確かに揺れたはず…」こんな気持ちを可視化して共有できる機能を開発しました.『精密体感震度』です.

本コラムでは,まず『精密体感震度』の実際の例をご紹介してから,そもそも震度はどのように決めているのか,体感震度を可視化することでどんないいことがあるのか,記していきます.

NewsDigestにおける「精密体感震度」の実例

8/20 午前 9:28 銚子沖の地震の『精密体感震度』

『精密体感震度』はNewsDigestの機能のひとつとして,2020年8月14日にリリースされました.有感地震(人が感じられる揺れの大きさになる地震)が予想されると緊急地震速報と各地の震度情報に紐付いて「どれくらい揺れを感じましたか?  なし・1・2・3・・・・6強・7」と書かれたフォームが送られてきます.自分の体感では震度いくつだったかを選び,「揺れを報告する」をタップして送信完了です.

リリース後,初の有感地震として『精密体感震度』機能が活用されたのは,8月20日午前9時28分発生の銚子沖の地震でした.
予測最大震度3として,有感になりそうな範囲に向けて体感震度報告のフォームが発出されました.都内を歩いていた私は揺れを感じなかったため「なし」をタップして送信,その後は地図上に他の人の報告結果が次々と増えていくのを眺めていました.

上記図の左は気象庁による震度情報,右は『精密体感震度』で報告された体感震度です.
両者を見比べると,気象庁発表の震度では東京や埼玉・千葉県北西部は震度0となっていますが,体感震度では「1」も報告されていることがわかります.(「体感震度7」と答える人はやっぱりいる,ということもわかりますね.)

体感震度1以上を報告した人の大半は,揺れを感じる前にフォームが届いて揺れに意識を向けたか,あるいは,「いま揺れた?地震だよね?」と思ってスマホを開き,体感震度報告フォームに促されて体感震度をタップしたかのいずれかでしょう.
その後,本稿を執筆している現時点までの間に,いくつかの有感地震で『精密体感震度』が活用されています.
いずれも(いたずらと思われる体感震度7等を除いて)気象庁の震度とほぼ同じ大きさの体感震度が報告されていることがわかります.体感震度1の範囲は本来の震度1の範囲より広くなる傾向があり,震度0とされるくらいの小さな揺れであっても,人が感じていることがわかります.
なお,体感震度4以上を回答すると,「身の回りの状況を教えてください」という画面になり,「本や食器が落ちた」「停電した」「特に目立った被害はなかった」など10個の項目から該当するものをタップして送信します.

震度観測の経緯 ―かつては体感で震度を決めていた―

そもそも震度とはどのように決められているのでしょうか.
日本の震度階級は震度0・1・2・3・4・5弱・5強・6弱・6強・7の全部で10段階あります.世界標準ではMMIという全12階級の震度が知られていますが,震度という概念自体が日本ほど活用されはいません.世界では日本のように頻繁に地震が起きる国はそう多くなく,震度階級に応じた揺れを身体が覚えている国民ということ自体が珍しいのです.
日本独自の震度について,震度計によってどのように処理されて算出しているか,震度計が開発される前はどのように決定していたか,について記しましょう.

震度計による震度の算出方法

日本には現在,約4300箇所に震度観測点があります.
どの自治体にも最低1箇所以上は震度計を設置することが義務付けられており,世界でもまれに見る稠密な震度観測網となっています.

震度計は地面の揺れ(加速度)を感知すると,データをデジタル処理して,まずは「計測震度」を算出します.発表される震度は整数ですが,「計測震度」は小数第一位までの数字になっています.地面の揺れの大きさはとびとびの値を取るわけではなく,震度3の揺れと震度4の揺れの間くらいの揺れも存在しているので,理にかなっていますよね.私たちになじみのある震度階級は,下図のルールにしたがって「計測震度」から換算されています.たとえば,計測震度が1.5から2.4までの間だった場合は震度2,計測震度4.4は震度4,計測震度4.5は震度5弱となります.

気象庁ウェブサイト「計測震度の算出方法」よりhttps://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/kyoshin/kaisetsu/calc_sindo.htm

「計測震度」が導入されるまで

上に書いた通り,日本のどこかで地震が起きると約4300もの観測点で計測震度が算出され,震度階級へと自動的に換算されます.
これがテレビやインターネットで公表されるまでにかかる時間はおよそ1分〜1分半です.
このしくみが運用されるようになったのは1996年4月からで,それ以前は震度計ではなく,気象庁職員が体感で震度を決めて発表していました.もちろん4300人も動員していません.全国158箇所での発表に限られていました.各地のより詳細な震度は現地の被害調査や,地域住民へのアンケート・聞き取り調査で判定し,後日発表していました.
1994年には約150箇所の震度観測点への震度計の整備を完了し,気象庁職員の体感による震度観測と並行して,計測震度が運用されるようになりました.年が明けてすぐの1995年1月,阪神・淡路大震災が発生します.大都市直下を襲った未曾有の大震災を経て,震度情報が救助の初動体制に重要であることが認識されたため,各市町村が独自に震度計を設置するようになりました.また,防災科学技術研究所も調査研究のために新たに震度計を設置しました.

これらを合計すると2020年現在4374箇所(気象庁670,防災科研792,自治体2912箇所)に震度観測点があり,地震が発生すると,気象庁がこれらの観測点からの情報を一元化して各地の震度情報を発表しています.気象庁職員の体感による震度観測は1998年に廃止され,現在は行われていません.

日本の震度観測の歴史は,判断については「体感から計測震度へ」と変更され,観測点については「気象庁のみのものから防災科研・自治体へ」と拡大されていったということになります.
より詳細な情報は気象庁ウェブサイト上の『震度の活用と震度階級の変遷等に関する参考資料』(PDF)からご覧になれます.https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/shindo-kentokai/hensen.pdf

体感震度を報告する意義

さて,これだけの震度観測点がある我が国において,「自分の体感では震度○くらい揺れたと思った」という主観を報告することに,いったいどのような意味があるのでしょうか.
ここでは,1)安心感につながる,2)防災意識の向上が期待できる,3)救助の初動体制に寄与する情報にもなりうる,の3点について記します.

1) 安心感につながる

周囲の情報から「確かに地震があった」「みんなも揺れたと思っている」と知ることで,地震直後の自分を落ち着かせることができます.
人は情報がない状態で耐えるのが苦手です.電車が急停車した時に「停止信号が出ました.情報が入り次第ご連絡致します」といったアナウンスが入るのを聞いたことがあるでしょう.このアナウンスで実質的に得られる情報は「急停止すべき何かが起きた」という既に知っていることだけですが,それでも無言を貫かれるのとはまったく異なりますよね.
こういった情報がない場合に人は,情報が欠落した状態が長く続くことに耐えられず,もはや非合理な情報(いわば嘘情報)でもいいから欠落を埋めようとします.デマが起こるのはこのためだとも言われています.周囲の人の体感震度報告が可視化され,みんなで共有できることは,地震後の自分を落ち着かせる安心感につながるのです.

2) 防災意識の向上が期待できる

報告を重ねることで防災意識の向上が期待されます.
まず震度は,①地震の規模,②震源までの距離,③地盤の特性,④建物の特性,によって決まります.
体感震度はこれらに加えて,自分が揺れを感じやすいか,という要素が入ります.したがって,揺れの大きさに注意を払うことは,地盤のことや建物のこと,自分自身のことを考えるきっかけとなります.

「震度4だと思ったのに,発表された震度は3」といった場合は,震度計の設置場所がその人のいる場所から離れている/その場所の地盤が悪い/その建物が揺れやすい/その人が揺れを感じやすい,のいずれかあるいは複合的な要因が考えられます.

たとえば「その場所の地盤」に関しては,既に詳細な情報が公開されています.
防災科学技術研究所の「J-SHIS地震ハザードステーション」では表層地盤の増幅率(どのくらい揺れやすいか)を見ることができます.
住宅についてはお住まいの自治体に問い合わせることで,耐震診断を受けることも可能です.
体感震度を報告することは,既にある防災情報や減災のためのしくみにアクセスするきっかけとなるでしょう.

さて,『精密体感震度』に興味を持った私の友人たちが,NewsDigestのアプリをインストールしました.そして複数人が,「困ったことに,ほどほどの地震が起きてほしいと思ってしまっている」「次の地震を待っている自分がいる」と困惑しつつも報告してくれました.きっと彼らはこれまで,小さな地震であれば一過性のものとして気にもとめず,大きな地震はできれば起きないでほしい,考えたくないと思っていたことでしょう.「『精密体感震度』を体感してみたい!」と思ったことで,小さな地震に対しても能動的な態度を取り始めているのがうかがえます.
頻度の高い小さな地震の能動的経験を積み重ねていくことは,より大きな地震への心構えを変えていくのではないかと期待しています.
心構えだけでなく,具体的な防災行動へもつなげていきたいですね.

少し防災研究のお話をしましょう.
かつては,人が防災行動を取るために必要なのは,災害やそれをもたらすハザードに関する科学的知識や,災害の恐ろしさを具体的に示す映像や写真だと思われてきました.阪神・淡路大震災や東日本大震災を経て,今では,より重要なのは「主体性」や「態度」であることが指摘されています.

知識を持っていて頭でっかちでも家具を固定していなければ被災してしまいますし,強烈な恐怖感はその事象自体を無視しようとする心理につながって防災行動にはつながりません.それよりは自ら自主的に取り組もうと思えること,自分の問題だと捉えて解決のための行動を取ろうとすることが大事というわけです.
防災に関する情報をただ受け身として得るだけではなく,自分自身が防災情報を提供する側になるというのも主体的な行動のひとつです.

ハザードマップや気象警報に代表される防災情報は,基本的には専門家が発出するもので,市民はその受け手であるとみなされています.一方で,情報をどれだけ精緻化・洗練化しても,必ずしも防災行動に結びついていないことも災害が起きるたびに目の当たりにします.たとえば,ハザードマップのメッシュを細かくしたり,色をわかりやすくしたりしても,残念ながらそれが避難率の上昇や,早めの避難に直ちにつながっているわけではありません.むしろ,情報が出るほど情報待ちになっているとの指摘もされています(矢守克也『巨大災害のリスク・コミュニケーション』2013).

防災情報の精緻化や洗練化も大事ですが,それ以上に,私たちひとりひとりが主体性を持てるか,専門家がやることだと思われてきた領域に市民が参加できるかといったことのほうが遥かに重要な要素なのです.

体感震度を「報告」することは,地震の発生・震源情報・震度情報・津波情報といった一連の災害情報がすべて「受け身」であったことを変革し,自らが防災情報の「主体」となるきっかけを提供するものだと言えます.
より頻度の高い低震度の地震の報告を繰り返すことで,防災意識が高まっていくことが期待されます.

3) 救助の初動体制に寄与する情報になりうる

日本には震度観測点が約4300箇所あり,世界でも稠密な観測網となっていることを書きました.しかし自治体の数で単純平均すると,各自治体に2〜3点ということになります.
お住まいの自治体の広さを思い浮かべてみてください.同じ自治体の中にも地盤の強いところ・弱いところがあるでしょう.気象庁から発表される震度は震度計が設置されている場所の揺れの大きさを現していますが,それ以外の場所の震度は必ずしもそれと同じとは限りません.

仮に,観測点がまばらに分布している地域で大地震が発生したとしましょう.
震源に最も近い震度計が震度5強を示したとしても,震央から震度計設置場所までに距離があった場合は,震央近傍ではより大きな揺れとなっていたことが考えられます.
このような時に体感震度の報告があれば,より詳細な地域の揺れの大きさがわかり,発災時の救助初動体制に寄与することもできるでしょう.特に震度6強や7にも至る場合は,もはや体感震度を報告している場合ではありません.
震央近傍地域から体感震度報告があがってこない,情報がブラックアウトしている,その一方でそこを取り囲む地域からは体感震度5強や体感震度6弱が報告されている,このような場合はより深刻な事態が想像できます.
このように,多くの人が報告することで,被害の初動体制への情報提供となることもあるでしょう.

最後に

どうでしょう,自分も『精密体感震度』を報告してみたい,と思われたでしょうか.
そうは言っても地震はなるべく起きないでほしいですし,地震をちょっと心待ちにしている自分というのは受け入れがたいですよね.

でも,私たちがどう思おうと,地球の方は着々と次の地震を準備しています.
私たちが願うと願わないとに関わらず,この国では必ず地震は起きるのです.
そして地震が起きること自体は,どんなに科学が発達しても止めることはできません.私たちができるのは,起きた地震による被害を小さくするために備えることです.地震が起きることは止められませんが,それが災害になるかならないかは私たちの行動である程度コントロールできるのです.

「次の地震で体感震度を報告してみたいな…」そう思ったあなたは,「地震に対して能動的に構える態度」を既に獲得したと言えるでしょう.
あなたが報告する「その地震」が大地震だったとしても被害を最小限にとどめられるように,家具の配置や固定を今一度,見直しておいてください.
オリンピックイヤーに備蓄を買い換えると,賞味期限切れにならずに済みますよ.思い立ったが吉日,この週末の間にやってしまいましょう.
今月中に…ではなく,この週末に!

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NewsDigest「精密体感震度」について
地震発生時、NewsDigestアプリの画面上で、どの程度の揺れを感じたかをユーザーが震度にたとえて投稿できるボタンが表示されます。各ユーザーが報告した体感震度がマップ上にリアルタイムに表示され、周辺地域の人達が「体感した震度」が表示されます。地震が起きていないときは機能が出てきませんのでご了承ください。
※位置情報は体感震度の表示や研究データとして活用以外の目的では一切使用しません。また、データは匿名化されており、個人情報は取得しない仕組みです。
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