
軽視してはいけない!地震による被害を防ぐために大切な耐震補強と重要視される理由
目次[非表示]
- 1.耐震補強とは
- 2.耐震性を把握できる2種類の耐震基準
- 3.倒壊など地震による被害が集中する旧耐震基準
- 4.耐震補強の重要性が明らかになった実験
- 5.自治体によっては耐震補強工事の助成金を受け取れる
- 6.企業を守るために実施しておくべきそのほかの地震対策5選
- 6.1.BCP・防災マニュアルを策定する
- 6.2.防災グッズを備蓄しておく
- 6.3.オフィスに安全対策を施す
- 6.4.ハザードマップを確認する
- 6.5.リスク情報を迅速に収集する
- 7.最後に
- 8.関連お役立ち資料集
日本では今後の南海トラフ地震や首都直下地震の発生が懸念されており、これを受けて日本政府は被害を可能な限り防ぐために建築物に関する耐震補強などの耐震化を推進しています。
ついつい耐震補強が後回しになっている企業も多数見受けられますが、これは耐震補強の重要性を具体的に把握していないという理由も考えられるのではないでしょうか。
今回は企業の防災担当者のために耐震補強が大切な理由と耐震基準の基礎知識、そのほかの地震対策などを説明していきます。
この記事を読むことで防災対策としての耐震補強の理解が深まるので、ぜひ参考にしてください。
※本記事で使用している画像は一部を除いて、Adobe Stockで取得しています。
※2020年11月25日更新
耐震補強とは

耐震補強とは、地震による倒壊などの被害を防ぐことを目的として、家屋やオフィスビルなど建物の耐震性を高めるために行う補強です。
新たに建築する場合は最新の耐震基準を必ず満たす必要がありますが、それ以前から建っている古い建築物に関しては新たに立て直さない限り、今の耐震基準を満たすようには義務付けられていません。
しかし旧耐震基準のままでは地震が発生した場合に深刻な被害を受けてしまうおそれがります。
そのため、地震による被害を最小限に抑えるためには耐震診断を依頼した上で建築物の耐震補強を行うことが望ましいです。
今の耐震基準にあわせた耐震補強が大切
今の耐震基準に基づいた耐震補強を実施することによって、ある程度の被害は防げますし、被災したオフィスや家屋などの建築物から安全に避難するための時間を稼ぐためにも役立ちます。
また建築物が倒壊した場合、道路が遮断されることで人命救助や物資の支給が迅速に行えなくなるなどのトラブルへ発展するおそれがあり、東京都ではこの状況を回避するために「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」などで建築物の耐震化を推進しています。
耐震性を把握できる2種類の耐震基準

耐震基準とは、建築物が地震に耐えられる強度を十分に満たしているのかを示す建築基準法で定められた基準のことであり、過去の大震災などによってその基準は度々、見直されてきました。
例えば1978年に宮城沖地震では死者28名や家屋7,400戸の全半壊など甚大な被害が発生し、これを受けて1981年6月には旧耐震基準よりも厳しい基準である新耐震基準へ改正したのです。
【旧耐震基準】
1981年5月以前までの耐震基準で、震度5強の地震ではほとんど損傷しない
【新耐震基準】
1981年6月に改正された耐震基準。震度5強の地震ではほとんど損傷せず、震度6〜7の大地震でも倒壊・崩壊しない
また2000年にも新しい内容へ改正されるなど、その後も耐震基準は安全のために定期的にアップデートされ続けていますが、全てこの新耐震基準に基づいています。
そのため、耐震基準を考える際は上記の旧耐震基準と新耐震基準を把握しておくことが重要です。
倒壊など地震による被害が集中する旧耐震基準

建築当初は建築基準法で定められた耐震基準に基づく耐震性を有していても、その後の改正などによって現在は基準を満たさなくなっている建築物を既存不適格と言いますが、既存不適格のままにしておくとオフィスや家屋などの建築物が地震によって倒壊等の著しい被害を受けるおそれがあるのです。
実際に新耐震基準よりも旧耐震基準のままの建築物の方が多く被害に遭っていることがこれまで起きた過去の震災で確認されています。
例えば1995年の阪神・淡路大震災では家屋の全半壊が10万棟を超え、死者6,400人のうち8割は家屋倒壊による圧死・窒息死という深刻な被害が発生しました。
その後、被災地の建築物を調査したところ、建築震災調査委員会が発表する「平成7年 阪神・淡路大震災 建築震災調査委員会中間報告」で説明されているとおり、新耐震基準よりも旧耐震基準の建築物に被害が集中していることが判明したのです。
その一方で新耐震基準の建築物はほとんど軽微な被害または無被害であったことが分かり、これによって耐震基準の重要性が再認識されました。
また2016年に発生した熊本地震でも旧耐震基準の建築物に多くの被害が集中していましたが、2000年以前の新耐震基準でも8.7%の倒壊・崩壊が確認されたのです。
しかし、これは2000年で改正された耐震基準で定められている接合部の仕様を満たしていないなどが原因であることがほとんどだったと分かっています。
耐震補強の重要性が明らかになった実験

独立行政法人防災科学技術研究所が2005年に行なった実験では、阪神淡路・大震災と同じ揺れを再現して耐震補強を施した家屋と施していない家屋を揺らしました。
以下の動画で分かるように耐震補強を施した家屋は目立った被害が見られなかったのにも関わらず、耐震補強を施していない住宅はわずか7秒ほどで1階部分が倒壊したのです。
1階にいた方は圧死などの被害に遭ってしまうと想定され、やはり安全のためにはオフィスや家屋の耐震補強が重要であると言え
自治体によっては耐震補強工事の助成金を受け取れる

国土交通省が発表する「建築物の耐震化の進捗状況」で説明されているとおり、地震による被害を最小限に抑えるために日本政府は2020年中に耐震化率を95%、2025年までに耐震性が満たない建築物をおおむね解消することを目指しており、耐震化のために様々な取り組みを推進しています。
その一環として耐震補強や耐震診断などを行うための助成金を支給する自治体も多数あり、例えば千代田区では「建築物の耐震化促進助成」によって耐震補強や耐震診断で発生する費用の一部を助成金として受け取ることができます。
【千代田区における建築物の耐震化促進助成の助成率(補強設計の場合)】
緊急輸送道路沿線:助成率2/3・助成限度額500万円
一般道路沿線:助成率1/3・助成限度額250万円
もちろん、旧耐震基準の1981年5月31年以前に建てられた建築物であるなどの条件をクリアする必要がありますし、自治体によっては実施していない場合もあるため、耐震補強などの実施を検討する場合は、あらかじめ自治体に問い合わせておくと良いでしょう。
企業を守るために実施しておくべきそのほかの地震対策5選

企業と従業員を守るためには、耐震補強のほかにどのような地震対策を実施しておけば良いのでしょうか。
この章ではそのほかの地震対策を説明していくので、特に企業の防災担当者はぜひ参考にしてください。
BCP・防災マニュアルを策定する
地震の発生に備えてBCP・防災マニュアルを策定しておきましょう。
BCPとは、災害や事故などのリスク発生時にその被害を最小限に留め、事業継続または早期復旧を図るための計画のことです。
BCP・防災マニュアルにはリスク発生時の対応をあらかじめ明確に定めておきます。
もし策定されていない状態のままリスクが発生すると混乱が生じて冷静な判断ができないばかりか、対応が遅れることで被害が拡大してしまうおそれがあるので、企業と従業員を守るためには事前に策定しておくと良いでしょう。
またBCP・防災マニュアルを1度策定しただけでは完成度の高い内容になるとは限らないため、定期的な訓練の中で定めた対応がきちんと機能するのかを確かめていく必要があります。
詳しくBCPを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
防災グッズを備蓄しておく
地震が発生した場合に備えて、従業員が安全に避難生活が送れるように防災グッズを備蓄しておきましょう。
一般的に電気・水道・ガスなどのライフラインの復旧や人命救助が落ち着くまでに3日程度かかると言われていますが、大規模な地震によって復旧・避難生活が長引く場合に備えて3日分を必要最低限とし、余裕を持って1週間分の防災グッズを用意しておくことが望ましいです。
企業の場合は東日本大震災で約515万人の帰宅困難者が発生したことを機に以下の東京都帰宅困難者対策条例条例17号などで、帰宅困難者となった従業員の一時的な帰宅の抑制と防災グッズを求められています。
【東京都帰宅困難者対策条例条例17号】
事業者に従業者の一斉帰宅の抑制と従業者の3日分の食糧等の備蓄についての努力義務を課します
現時点ではこの条例を破ったことに対する罰則は設けられていませんが、企業は労働契約法第5条で従業員に対する安全配慮義務が課せられているため、もし一切の防災グッズを用意しなかったことで従業員に被害を与えた場合は法的責任を問われ、損害賠償金を支払わなくてはなりません。
そのため、企業と従業員を守るために可能な限りの防災グッズを用意しておきましょう。
【労働契約法第5条】
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする
詳しく用意するべき防災グッズの種類を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
揃えておきたい防災グッズの基本と必要な防災グッズ18選
Withコロナで備蓄が不可欠な防災グッズの現状とその基本
オフィスに安全対策を施す
地震による二次被害を最小限に抑えるために事前にオフィス内に安全対策を施しておきましょう。手軽かつ効果的な安全対策は、主に以下のとおりです。
【キャビネットなどを固定する】
下敷きなど転倒による負傷を防ぐためにキャビネットなどは、なるべく壁につけ突っ張り棒やL字金具などで固定する。オフィスの中央にキャビネットを置く場合は、安全のために腰までのタイプを選ぶ
【コピー機やPCなどのOA機器を固定する】
落下や転倒による負傷を防ぐためにコピー機やPCなどをジェルマットやワイヤー、ストッパーなどで固定しておく
【窓などに飛散防止シートを貼る】
ガラス片による負傷を防ぐために事前に窓やガラス製のドアには、飛散防止シートを貼っておく
【避難経路を確保する】
災害発生時にスムーズに避難できるように出入り口や廊下など出入り口付近には、キャビネットなどの物は置かないようにする
詳しくオフィスの安全対策を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
ハザードマップを確認する
地震発生時は何が起こるのか分かりませんが、ある程度の被害状況を把握する上で役立つのがハザードマップです。
ハザードマップとは、過去の災害履歴に基づいて今後の災害による被害状況や範囲を予測し、安全な避難場所・避難経路を記載した地図のことであり、自治体や国土交通省によって地震や水害など災害の種類別に用意されています。
しかし、このハザードマップはあくまでも過去の災害履歴に基づく予測に過ぎませんし、自治体によってはハザードマップが更新されていない場合もあるため、複数の避難経路・避難場所を選んだ上で臨機応変な対応ができるようにしておくと良いでしょう。
リスク情報を迅速に収集する
地震などの災害発生時に被害を少しでも軽減するためには、可能な限り正確で迅速にリスク情報を収集した上で、直ちに初動対応を開始しなければなりません。
また地震の場合は自社だけでなく取引先などのサプライチェーンも麻痺するおそれがあるので、状況を正確に把握し、的確な対応をとるためにはリスク情報の収集が重要です。
リスク情報の収集手段はテレビやラジオ、自治体の防災情報など様々ですが、近年は個人だけでなく自治体や企業でSNSを使ったソーシャル防災が活用されています。
SNSには発生したばかりの事象がほぼリアルタイムで投稿されているだけでなく、現地の状況がテキスト・映像・写真で分かるため、近年はテレビやラジオと肩を並べるほどの影響力を持っており、報道機関も取材のために利用しているほどです。
しかし、災害発生時には特に悪質なデマや誤った情報も拡散されやすいという大きな課題を抱えているのが現状であり、SNSに投稿されたリスク情報は鵜呑みにする前に裏付けを取らなければなりません。
ただ、人による分析だけでは正誤の判断にどうしても時間がかかりますし、SNSには大量の情報が投稿されていくため、必要な情報の取り漏らしが発生してしまうという新たな欠点が生じてしまいます。
そこで近年は人的・時間的コストをかけずに様々なリスク情報を迅速に収集するために企業や自治体でFASTALERTなどのAI緊急情報サービスが導入されています。
BCPや防災対策などを目的としてすでに全ての民放キー局や大手報道機関、一般企業、自治体で幅広く導入されているFASTALERTは次の4つのメリットがあるため、迅速なリスク情報の収集と初動対応を開始することができるのです。
【FASTALERTの4つのできる】
・災害など“報道前”のリスク情報がAIによってほぼリアルタイムで検知できる
・報道ではカバーしきれない地域などの細かい情報も入手できる
・1つのサービスで自然災害、事故、事件など幅広いリスクを調査できる
・現地に行かなくてもテキスト、映像、写真で状況が把握できる

例えばFASTALERTでは2019年9月5日の京急脱線事故を事故発生から1分後に第1報を検知・サービス利用者に情報提供していましたが、これはテレビの報道よりも1時間15分ほど早かったことが分かっています。
報道で知れば良いと思う方もいるかもしれませんが、事象の発生から報道までに大きなタイムラグが空きますし、当事者の場合はこのリスクの把握と初動対応の遅れによって被害が拡大してしまうおそれがあるのです。
リスク情報の収集をスムーズに行いたいとお考えの担当者さまは、ぜひFASTALERT基本紹介資料から資料をお申し込みくださいませ。
【サービス資料で分かる3つの内容】
・これまでFASTALERTが検知した主なリスク情報一覧
・業種ごとのFASTALERTの活用シーン
・現在ご利用いただいている企業さまのレビュー
※FASTALERTは、企業・自治体のお客様専用のサービスとなります。
※ソーシャルリスクレポートなどその他の資料は、こちらの資料ダウンロードからご覧ください。
最後に
旧耐震基準のままにしている建築物もまだまだありますが、大規模な災害が発生すると倒壊するおそれがあるため、非常に危険な状態だと考えられます。
もちろん、新耐震基準を満たす耐震補強を施したからと言って必ずしも建物に損傷が発生しないとは限りません。しかし、それでも少しでもリスクによる悪影響を防ぐためには事前にオフィスビルなどの建築物に耐震補強を施しておくことが望ましいです。
後悔先に立たず、という言葉があるように地震などのリスクによって最悪の事態が発生してからでは取り返しがつきません。そのため、事業と従業員を守るために事前に可能な限りの対策を実施しておきましょう。