
オフィスが行うべき防災対策の基礎知識と災害別の対策方法
目次[非表示]
- 1.おさえておきたい防災の基礎知識
- 1.1.そもそも防災とは
- 1.2.災害には3種類に分類される
- 2.基本的なオフィスの7つの防災対策
- 2.1.BCPや防災マニュアルを策定する
- 2.2.安否確認の手段を決める
- 2.3.定期的に訓練を行う
- 2.4.防災グッズなどを備蓄しておく
- 2.5.ハザードマップを確認する
- 2.6.データのバックアップ
- 2.7.避難経路を確保しておく
- 3.災害別のオフィスの防災対策
- 4.自然災害などリスク情報の収集やBCPで活躍するFASTALERT
- 5.まとめ
- 6.関連お役立ち資料集
日本では地震や台風など様々な自然現象が多く発生しており、勤務中にそういった災害に遭ってもおかしくありません。
そのため、従業員の安全を確保する上でオフィスの防災対策が必要不可欠ですが、オフィスにどのような災害対策を行えばいいのか分からないという方も少なくありません。
そんな方のために今回は、オフィスで行える防災対策の予備知識とその具体的な対策方法などを説明していきます。
この記事を読むことで効果的なオフィスの防災対策を導入できるようになるので、ぜひ読み進めてください。
おさえておきたい防災の基礎知識

オフィスの防災対策の前にまずは防災の基本を紹介していきます。防災の基本が分かればより防災対策の理解度が深まるので、ぜひ読み進めてください。
そもそも防災とは
防災とは自然災害や事故など様々な災害から建物や従業員などを守る、または被害の拡大を防止する取り組みのことです。
災害対策基本法の第2条の2では災害を以下のように定義しています。
「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、および災害の復旧を図ることをいう」
防災で従業員などの安全を確保することは被災後の事業の継続・早期復旧を図る上で欠かせません。
また企業には事業所で働く従業員を守る安全配慮義務が以下の労働契約法の第5条により課せられています。
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」
防災対策を一切行わないなど安全配慮義務を怠ったことで従業員に被害を与えてしまった場合、安全配慮義務違反として法的責任を問われ従業員に対して損害賠償を支払う必要があります。
もちろん、この安全配慮義務は災害時においても例外ではないため、できうる限りの防災対策をオフィスに行いましょう。
災害には3種類に分類される
災害といっても自然災害や事故など、その種類は多種多様です。
災害を大きく分けると自然災害・人為災害・特殊災害(CBRNE災害)の3種類があり、人為災害と特殊災害(CBRNE災害)はさらに細かく分類されています。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
【自然災害】
地震、台風、豪雨、洪水、土砂崩れなど
【人為災害】
①都市災害
火災、大気汚染、水質汚濁、騒音、振動など
②労働災害(産業災害)
メンタルヘルスなど労働が要因となって従業員が負傷したり、疫病にかかったりする災害
③交通災害
交通事故や飛行機・船舶事故など
④管理災害
ずさんな設計や計画、操作ミス、管理の怠慢など
⑤環境災害
水質汚染など環境破壊が要因となって発生する災害
【特殊災害(CBRNE災害)】
①Chemical(化学)
有害物質や化学兵器によって起こる災害
②Biological(生物)
病原体や感染症のパンデミックなど
③Radiological(放射性物質)
原子力発電所の事故や放射能兵器によるテロ
④Nuclear(核)
核兵器を使ったテロ
⑤Explosive(爆発)
事故やテロによって起こる爆発
通常の企業で特殊災害は起こりえないと考える方もいるかもしれませんが、Biological(生物)に分類されるインフルエンザの集団感染は、日本でも頻繁に発生しています。
企業によって対策を取るべき災害は異なるので、どのような災害が発生し得るのかよく考えておきましょう。
基本的なオフィスの7つの防災対策

ここまで防災の基本を説明しました。次にオフィスで行える基礎的な防災対策を解説していくので、ぜひ参考にしてください。
BCPや防災マニュアルを策定する
事業や従業員を災害から守るためにBCPや防災マニュアルを導入しましょう。
BCPや防災マニュアルで事前に災害発生時の対応を定めておけば、万が一の際に冷静に対処できるようになります。
BCP・防災マニュアルで緊急時の体制とメンバーを決定しますが、災害発生時は何が起こるのかわかりません。
メンバーが不在の場合も十分に想定できるので、あらかじめ代行者を複数人決めておくと良いでしょう。
より詳しくBCPや防災マニュアルを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
安否確認の手段を決める
災害発生時は従業員が無事なのかを確かめることはもちろんのこと、事業の継続や復旧のために従業員が業務に就くことができるのかを確認する必要があるため、安否確認は重要です。
緊急時に安否確認のシステムを確実に作動できるように複数の端末を用意、またはインターネットのブラウザでどのような場所でも使えるようにしておくと良いでしょう。
また従業員が登録したメールアドレスを変更したまま報告し忘れているという自体は起こりえます。
その場合、災害発生時に安否確認を行う手段がほぼなくなってしまうので、普段から登録された情報が正しいのかを確認しておきましょう。
今回は簡易的な紹介となりましたが、より詳しく安否確認を知りたい方は次の記事を参考にしてください。
定期的に訓練を行う
策定したBCP・防災マニュアルを従業員に浸透させるには定期的な訓練が欠かせません。
訓練を行う際は必ずBCP・防災マニュアルに沿った内容にし、きちんと機能しているのかを確かめていきます。
訓練終了後に改善点を洗い出し修正を重ねることで、より効果的なBCP・防災マニュアルに仕上がっていきます。
また、すでに訓練を行なっている場合でも一度、作成した訓練シナリオを使い回していると想定外の事態が発生した際に対応できなくなってしまうので、地震から火災に状況を変えるなど必ず訓練の度にシナリオを変更しましょう。
さらに詳しく訓練のシナリオを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
防災グッズなどを備蓄しておく
一般的に水道・ガス・電気などのライフラインの復旧や支援物資の到着までに3日程度かかると言われています。
大規模な災害が発生した場合も想定して3日分を必要最低限とし余裕を持って1週間分の防災グッズなどを確保しておくと良いでしょう。
また東日本大震災で大量の帰宅困難者が発生したこと機に内閣府が発表した「東京都帰宅困難者対策条例」の条例第17号では、以下のように定められています。事業者に従業者の一斉帰宅の抑制と従業者の3日分の食糧等の備蓄についての努力義務を課します。
この条例は災害による二次被害から無理に帰宅しようとする帰宅困難者を守ると共に救助活動の妨げを防ぐという目的があります。
対象となるのは正規・非正規問わずに同じ事業所で働く全従業員であり、全従業員分の食糧や防災グッズなどを準備するのがベストです。
この条例に書かれている努力義務とは、「〜するよう努力しなければならない」という意味であり、違反したからといっても特に罰則はありません。
ただし、前述しましたが企業には労働契約法の第5条で、以下のように安全配慮義務という法的責任が課せられています。使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする
つまり企業が安全対策を怠っていたことが原因で従業員に被害を与えてしまった場合、安全配慮義務違反として法的責任に問われ、従業員に損害賠償を支払わなければなりません。
これは災害時においても決して例外ではなく、予見できる災害に関してはきちんと対策を立てておく必要があるのです。
コストが惜しいからと一切防災グッズなどを備蓄しないのは得策ではないため、できうる限りの用意しておくと良いでしょう。
企業が準備しておくべき防災グッズを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
ハザードマップを確認する
あらかじめハザードマップを見て、事業所の周囲にどのような被害が発生するのかを確認しておきましょう。
ハザードマップとは、災害による被害状況・範囲を予測し、安全な避難経路や避難場所を記載した地図のことで、災害別のハザードマップが自治体や国土交通省により公開されています。
災害発生時は何が起こるのか分からず、避難経路として決めていた道が建物の倒壊などにより塞がってしまう事も十分に想定できるので、2つ以上の避難経路を決めておくと万が一の際も安心です。
データのバックアップ
企業のIT化が進んでいる現代では事業の継続・早期復旧を図る上で、システムやデータなどのバックアップが必要不可欠です。
そのため、災害により被害を受けたシステム・データなどの復旧を図るDR(ディザスタリカバリ)を導入しておきましょう。
このDRで一度に全てのシステム・データを復旧させようとすると余計なコストがかかってしまうので、以下の3つを明確に定めておくことが大切です。
【RPO(目標復旧時点)】
過去のどの時点のシステム・データを復旧させるのかを決める指標です。秒・分・時間・日で設定し、RPOが1日の場合は1日前のデータを復旧します。
【RTO(目標復旧時間)】
被害に遭ったシステム・データをいつまでに復旧させるのかを決める指標です。こちらもRPOと同じく秒〜日単位で設定し、RTOが1日であれば1日以内に復旧を完了させます。
【RLO(目標復旧レベル)】
破損したシステム・データをどのレベルまで復旧させるのかを決める指標です。このRLOはRTOとセットで考えられ、対象となるのはサービスや品質など事業によって異なります。
RLOは%で表記し、RTOが1日でRLOが50%であれば1日以内に50%のサービスを提供できるように復旧します。
迅速に事業を復旧したい場合、RLOを100%(災害発生前の状態)に設定するよりは、50%などに設定して最低限のサービスを提供できるようにした方が結果的に事業の復旧が早くなります。
ここでは簡易的な紹介となりましたが、より詳しくDRを知りたい方は以下の記事をご覧ください。
避難経路を確保しておく
災害発生時に迅速に避難できない、といった事態を防ぐためにあらかじめオフィスのレイアウトを見直しておくことが大切です。
迅速な避難ができるように出入り口や非常階段など避難経路の近くに物を置かないようにしましょう。
また廊下はスムーズに避難できるように建築基準法の第119条では、通路の片側に部屋がない場合は1.2m以上、両側に部屋がある場合は1.6m以上の廊下の幅を確保しなければならないと定められています。
平成13年に発生した歌舞伎町の雑居ビル火災では唯一の避難経路である非常階段が物置代わりにされていたため、荷物が邪魔となって脱出できず44人の方が亡くなられました。
同じ状況に陥らないように、避難経路の確保は徹底的に行いましょう。
災害別のオフィスの防災対策

ここまでオフィスの基礎的な防災対策を紹介しました。次に災害別の防災対策を説明していくので、ぜひ参考にしてください。
地震の対策
地震が発生するとオフィスの建物自体には大きな被害がなかったとしても、キャビネットの転倒による負傷など二次被害が発生する場合があります。
そのため、オフィス内で地震に備えて対策を行っておきましょう。
ここではオフィスでできる地震対策の一例を説明していきます。
【キャビネットなどの家具】
キャビネットなどの家具はなるべく壁につけ、つっぱり棒やL字金具で固定します。
またオフィスの中央など壁から離れた場所にキャビネットを設置する場合は、腰までの高さのキャビネットを選びましょう。
【パソコンやコピー機などのOA機器を固定する】
パソコンやコピー機などの落下や転倒で負傷する可能性があるため、ジェルマットやバンドなどを使って固定します。
【窓ガラスに飛散防止シートを貼る】
窓ガラスやガラス製のドアの場合、ガラス片が飛び散るおそれがあるため、飛散防止シートを貼っておきましょう。
さらに詳しくオフィスの地震対策を知りたい方は、次の記事を参考にしてください。
火災の対策
オフィスで火災が発生することはあまりないと考えている方もいるかもしれませんが、電源タップの誤った使用などオフィスにも火災を引き起こす要因はたくさんあります。
火災による被害を最小限に抑えるためにきちんと対策を行っておきましょう。
ここでは主な4つの火災対策を紹介していきます。
【コンセントのトラッキング現象に注意する】
トラッキング現象とは、コンセントとプラグの間に埃が溜まって湿気を吸収することで漏電し発火する現象のことです。
トラッキング現象による火災を防ぐために定期的な掃除を心がけたり、使わないコンセントをキャップで塞いだりするなどの対策を行いましょう。
【電源タップの使用容量をきちんと守る】
電源タップの使用可能電力1,500ワットまでに設定されていることが多く、たこ足配線などで使用可能電力を上回ってしまうと火災が発生するおそれがあります。
そのため、使用する電子機器の消費電力を確かめた上で電源タップの使用可能電力を守りましょう。
【全員が初期消火をできるようにしておく】
消防署に連絡しても消防隊が到着するまでに時間差があるため、被害を最小限に抑えるために自分たちで初期消火を行わなければなりません。
そのため、迅速な初期消火を実現するために同じ事業所内で働く全員が初期消火を行えるよう訓練しておきましょう。
【防災設備の定期点検を必ず行う】
消火設備や防火・防排煙設備などの防災設備は、消防法や建築基準法などの法令によって所持者・管理者・占有者が管理することが義務づけられています。
火災発生時に防災設備が万が一、機能しなかった場合、被害が大きくなるばかりか命を落としてしまう可能性が非常に高いので、怠らずにきちんと点検しておきましょう。
ここでは簡易的な紹介となりましたが、より詳しく防災設備や火災対策を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
水害の対策
内閣府が2018年に発表した「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によれば、BCPで洪水を想定している企業は全体の30%です。
水害対策を行わないまま被害に遭ってしまうと、設備・機械などが故障することで事業継続が難しくなるばかりか、サービスに遅れが生じることで顧客離れが起こるおそれがあります。
そのため、きちんと水害対策を導入しておくことが大切です。ここでは水害対策の一例を紹介していきます。
【設備などを高階層に置く】
近くに河川や海があるなど特に水害による被害を受けやすい場合ですが、事業で重要な設備やサーバーはなるべく高階層に置くようにしましょう。
こうするだけで設備などが故障する可能性を減らせます。
【浸水対策グッズを確保しておく】
水害に備えて事前に浸水対策グッズを用意しておきましょう。
浸水対策グッズには、建物への浸水や土砂崩れを防ぐ水のう・土のう、止水板などがあります。
また水害発生時は排水溝やトイレから下水が逆流するおそれがあるため、水のう・土のうで対策しておきましょう。
【災害保険に加入する】
浸水深(浸水している地面から水面までの高さ)が何mもある地域に事業所がある場合は、最悪の事態に備えてあらかじめ保険に加入しておきましょう。
ここでは簡易的な紹介となりましたが、より詳しくオフィスの水害対策を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
自然災害などリスク情報の収集やBCPで活躍するFASTALERT
災害発生時は、意思決定に基づいた初動対応をすみやかに開始するために、被害状況などの情報収集を行わなければなりません。
しかし、災害発生時はリソースが限られた状況の中で情報を精査しなければならず、場合によっては対応しきれないおそれがあり、これによって的確な対応ができない可能性があります。
この状況を解決するために自治体や企業では、AI情報収集サービス「FASTALERT」が活用されています。
FASTALERTは、自然災害・事故・事件など自治体や企業におけるリスクが発生した場合にAIが正誤を分析した上でほぼリアルタイムでサービス利用者に提供する仕組みです
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まとめ
今回はオフィスの防災対策の基礎知識や具体的な対策などを紹介しました。最後にもう一度おさらいすると、本記事の重要なポイントには次の3点があげられます。
- 防災は、従業員の安全を確保するだけでなく被災後の事業の継続を図る上で必要不可欠
- 防災を怠ったことで従業員に被害を与えてしまった場合、安全配慮義務違反として法的責任を問われる
- 災害は、自然災害・人為災害・特殊災害(CBRNE災害)の3種類がある
この記事を参考にきちんと防災に取り組みましょう。