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インシデント・コマンド・システムの実施が最重要な理由

災害や事故などのリスクによる対応を適切かつ迅速に行うためにはインシデント・コマンド・システムの導入が不可欠です。

しかしインシデント・コマンド・システムは日本ではあまり浸透しておらず、中にはそもそもインシデント・コマンド・システムが何かを知らない方も多くいるでしょう。

今回はそんな方のためにインシデント・コマンド・システムの基本と必要な組織、行う上でおさえておくべきポイントなどを説明していきます。

この記事を読むことでスムーズにリスクの対応を行えるようになるので、ぜひ参考にしてください。

インシデント・コマンド・システム(ICS)とは

インシデント・コマンド・システム(Incident Command System:現場指揮システム)とは、災害などのリスク発生時における組織のマネジメントのことです。

災害などのリスク発生時には多くの報告が1人の担当者に集中してしまう、混乱した状況の中で指示が乱立することで重要な指示が正しく伝わらないなどの問題が発生する場合があります。

しかし、このインシデント・コマンド・システムを実施すれば、対応を行う組織の役割や指揮の方法などを決められるため、組織の混乱を最小限に抑えながらリスクの対処に集中できるようになるのです。

インシデント・コマンド・システムは、災害や事故など多くのリスクが取り巻く企業においても活用できるので、万が一の事態に備えて平時から導入しておくと良いでしょう。

※インシデント(Incident)とは、重大な危機に発展するおそれがある事象のことです。

インシデント・コマンド・システムを実施してない場合のリスク

もしインシデント・コマンド・システムを実施していない状態で自然災害などのリスクが発生してしまった場合は、以下のトラブルが発生することで被害が拡大してしまうおそれがあります。

  • 優先して行う対応が不明瞭
  • 防災対応がスムーズに進まない
  • 自組織や他機関との連携が上手くいかない など

アメリカで生まれたインシデント・コマンド・システム

西日本電信電話株式会社の主査である東田光裕氏が発表する「危機対応システム(ICS)と情報過程」で説明されているように、1970年代のアメリカ・カリフォルニア州で大規模な森林火災の対応にあたって組織内外で以下の問題が発生していました。

  • 1人の担当者に報告が集中してしまう
  • 緊急時における組織の構造が複雑
  • 信頼できる災害情報の把握が難しい
  • 権限の境界が不明瞭 など

こうした問題を解決すると共に組織の連携を的確に取ることを目的にインシデント・コマンド・システムを消防署によって作成されました。

その後、インシデント・コマンド・システムは有用性が認められ、消防署だけでなく警察や自治体など幅広い組織で導入が始まったのです。

現在は、世界中の組織でテロや災害など多種多様なリスクに対する危機管理の一環として普及しています。

対象となるのはオールハザード

インシデント・コマンド・システムでは、災害や事故だけでなく、リスクを引き起こすおそれのある危険要因も対象となるのが特徴です。

災害やその危険要因を全て合わせてオールハザード(全ての危険要因)と呼び、主に以下のようなリスクがオールハザードとしてあげられます。

  • 地震や台風などの自然災害
  • 操作ミスなどの人為災害
  • 原子力事故などの特殊災害
  • コンサートやスポーツなどのイベント

スポーツなどのイベントは、中には災害と関係がないと思う方もいるかもしれません。

しかし、多くの人々が集まったイベントでは将棋倒し(群衆雪崩)やテロなどのリスクが発生するおそれがあるため、被害を防ぐためには事前にきちんと対策や対応する組織を定めておくことが大切です。

イベントで発生したリスクの事例

イベントがリスクを引き起こした例としては2001年に発生した明石花火大会歩道事故があげられます。

この花火大会では大会終了直後に駅方面に向かう見物客と会場方面へ向かう見物客で歩道橋が混雑し、群衆雪崩が起こりました。これによって死者11名、重軽傷者247名の被害が発生。

この事故が起きた主な要因には警備を行っていた明石警察署と警備会社ニシカンがきちんと協議せず、警備の人員が不足しているなど観客に対する安全配慮を怠っていたことがあげられます。

インシデント・コマンド・システムに必要な5つの機能と部門

次にインシデント・コマンド・システムを行う部門を解説していきます。インシデント・コマンド・システムに取り組む上でどれも重要な情報になるので、ぜひ読み進めてください。

指揮部(Command)

指揮部のリーダーである現場責任者は、リスク対応に関する全責任を負って、以下3つの対応を行います。

  • 現場の安全確保
  • 関係者への情報提供
  • 関係組織との連携

上記を徹底した上で計画の作成や優先する対応を行いますが、この現場責任者は事前に決めておく役割ではありません。現場責任者はリスク発生時の現場に最初に到着し、状況をよく把握している方が選ばれます。

つまり誰もが現場責任者になる可能性があると言えるので、的確な判断をとれるように普段からきちんと訓練しておきましょう。

また現場責任者をサポートするために広報官、安全担当官、調整官が設けられます。

通常は指揮部のみでリスクの対応を行いますが、リスクによる被害の範囲が広く指揮部だけで対応しきれない場合は、必要に応じて以下4つの部門が設立されます。

  • 実行部
  • 計画情報部
  • 包括支援部
  • 財務・総務部

上記の部門が設けられた場合、現場責任者が各部門の責任者に指示を出し、広報官、安全担当官、調整官が伝達や意思決定を補佐するという役割が増えるので、覚えておきましょう。

※指揮部以外の4つの部門を一般幕僚と呼びます。

実行部(Operations)

実行部は現場責任者の計画や対応を実行する部門です。リスクの種類によって実行する対応は異なりますが、主に以下のような対応を行います。

  • 救助活動
  • 避難誘導
  • 支援物資の提供
  • 避難所の運営
  • 炊き出し
  • 復旧作業 など

基本的に現場責任者と共に行動をしますが、人数が多く管理できる人数を超えた場合は実行部の中で以下3つの勢力をもとに複数の班を編成します。

【単独勢力】
組織に協力する個人や資機材
【混成部隊】
警察と消防など異なった専門家の部隊
【専門部隊】
医療チームのみの部隊など同一種類の部隊

計画情報部(Planning)

計画情報部では被害状況の情報収集や現状のリソースの把握、状況報告などを担い、様々な専門家を集めて被害の予測をし、対策を立てる部門です。

計画情報部長とその役割を補佐する副部長が対応していきますが、被害の規模に応じて以下4つの係を任命します。

【勢力係】
組織の協力者や資源の受け入れを行い、どのような編成を行えるのかを考えます。
【状況係】
常に最新の情報を収集し、状況報告を行います。
【文書係】
後述する緊急時行動計画(IAP)の作成や関連文書の管理を担当します。
【解除係】
必要のない班の解除や任務解除計画の作成を行います。

包括支援部(Logistics)

包括支援部では、被害の規模や種類に応じて通信手段の確保や支援物資の管理、医療などをサポートする部門です。

前述した実行部と違ってサポートの対象となるのは被災者ではなく、リスクの対応を行う組織の方となるので、覚えておきましょう。

包括支援部長と副部長で担当しますが、被害の範囲が広く対応が複雑になる場合は、補給支部と支援支部を設置します。

【補給支部】
▼通信係
通信計画の作成や通信機器の配布、通信設備の管理などを行います。
▼医療係
医療や救急輸送などを担当します。
▼食料係
食料の提供を行います。

【支援支部】
▼手配係
必要な人員・資機材の提供を担当します。
▼施設係
組織の人員が待機するキャンプなどの設備の管理や警備を行います。
▼輸送支援係
輸送手段の手配や燃料補給を担当します。

財務・総務部(Finance/Administration)

財務・総務部は、人員の労務管理や機材のレンタルに必要な契約、支出に関する情報収集などを担います。

災害時においてもこれらの対応は重要ですが、深刻な被害が発生し長期間にわたる復旧作業が必要な場合などを除いて通常は設置されることはなく、指揮部がこの対応を行うのがほとんどです。

失敗しないインシデント・コマンド・システムの2つの鉄則

次にインシデント・コマンド・システムで考えておくべき2つのポイントを説明していきます。

どれも重要な内容になるので、ぜひ読み飛ばさずにご覧ください。

指揮系統を明確にする

インシデント・コマンド・システムを行う上で最重要になるのが、スムーズに現場指揮者の指示が各部署に行き渡ることです。

この指揮系統の流れが定まっていないと指示がきちんと伝わらないことで混乱が生じるばかりか、適切な対応がとれず被害の拡大へつながるおそれがあるため、どのような指揮系統にするのかを事前に定めておきましょう。

指揮系統の種類には一元指揮と統合指揮との2種類があります。

【一元指揮】
各部署の1人の上司から指示を受けたり、報告したりする指揮系統
【統合指揮】
各部署のリーダーを集めて、ルールや指示などを決める指揮系統

一元指揮は指示の乱立を防ぐという目的があり、例えば直属の上司の指示に従って動いていたところにより地位の高い組織の人間が新たな指示を出すと混乱が生じ、スムーズなリスクの対応が困難となります。

また警察や消防など様々な専門家が入り乱れているのにも関わらず、統合指揮が守られていないと同じ場所でバラバラに動くなど効率的な対応ができません。

リスクの被害状況や対応を行う組織の規模によって適切な指揮系統は異なりますが、定めた指揮系統は厳守しましょう。

IAP(緊急時行動計画)に沿って対応する

ICSを行う上ではIAP(緊急時行動計画)の策定が欠かせません。緊急時行動計画とはリスク発生後にどのような対応を行うのかを定めた計画のことです。

様々なリスクから事業を守るBCP(事業継続計画)と混同する方もいるかもしれませんが、BCPがリスクの発生に備えて事前に対応を定めておくのに対し、緊急時行動計画はリスク発生後に対応を決めます。

※Incident Action Planを略して、IAPと呼ばれています。

リスク発生時には想定以上の被害が起こる場合も多々あるため、被害状況に合わせて対応を定めた方が適切に対処できるのです。この緊急時行動計画では、主に以下の内容を定めます。

【目標シート】
達成する目標
【組織図】
組織構成を記載した図
【戦術と勢力の配備図】
目標達成のための戦術と必要な勢力・資機材を記載した図
【参考文書】
通信計画や医療計画など

この緊急時行動計画は指揮部または計画情報部の文書係が作成・管理するため、覚えておきましょう。

責任担当期間を設定する

緊急事態発生時は特に1人の担当者に報告や対応などが集中してしまうおそれがありますが、それではその担当者が疲弊することによってミスが発生し、それが深刻な事態への引き金になるリスクがあります。

1人の担当者が長時間の災害対応を防ぐために責任担当期間(Operational Period)を明確に設定しましょう。

責任担当期間とは、各部署の担当者を8時間や12時間などの時間制で交代する考え方のことであり、疲弊による担当者のミスを防ぐ目的があります。

もちろん、交代にあたってスムーズに引き継ぎできなければ混乱が生じるおそれがあるため、担当者は何が起こり、どのように対処したのかを詳細に記載した日誌を必ず記録しておきましょう。

リスク情報の早期把握に役立つFASTALERT

災害発生時は、意思決定に基づいた初動対応をすみやかに開始するために、被害状況などの情報収集を行わなければなりません。

しかし、災害発生時はリソースが限られた状況の中で情報を精査しなければならず、場合によっては対応しきれないおそれがあり、これによって的確な対応ができない可能性があります。

この状況を解決するために自治体や企業では、AI情報収集サービス「FASTALERT」が活用されています。

FASTALERTは、自然災害・事故・事件など自治体や企業におけるリスクが発生した場合にAIが正誤を分析した上でほぼリアルタイムでサービス利用者に提供する仕組みです。

弊社ではFASTALERTの紹介資料やSNSで炎上が起きる理由など、企業や自治体の防災担当者が抱えるお悩みを解決するために防災に関する資料を幅広く用意しています。

詳しくご覧になりたい方は、「防災お役立ち資料」から資料をお気軽にダウンロードしてください。

最後に

災害発生時は何が起こるのか分かりませんし、事業継続だけでなく様々な防災対応が集中するため、場合によっては混乱が生じることで被害が拡大してしまうおそれがあります。

こうした事態を防ぎつつ、的確に防災対応を進めていくためにインシデント・コマンド・システムを平時から実施して被害を最小限に抑えましょう。

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