
楽観視できない豪雨被害と事業が受ける取り返しのつかない悪影響
目次[非表示]
- 1.豪雨がもたらす事業への深刻な被害
- 2.豪雨が発生させる主な災害の種類
- 3.豪雨による水害・土砂災害の危険性が高い場所
- 4.状況にあわせた的確な避難方法を選ぶことが重要
- 5.豪雨による甚大な被害を受けた事例
- 5.1.西日本豪雨(平成30年7月豪雨)
- 5.2.熊本豪雨(令和2年7月豪雨)
- 6.企業における豪雨対策
- 6.1.BCP・防災マニュアルを策定しておく
- 6.2.タイムラインで防災行動計画を定める
- 6.3.防災情報に注意する
- 6.4.ハザードマップを確認する
- 7.リスク情報を早期把握できるFASTALERT
- 8.最後に
- 9.関連お役立ち資料集
※2021年11月29日更新
日本の場合、特に梅雨期や台風期になると毎年のように豪雨による被害が発生していますが、平時から十分に対策していなければ、状況によっては事業継続を脅かしかねない深刻な事態に繋がってしまう危険性があります。
しかし、豪雨被害に備えるためにどのような対策を行えば良いのか困っている企業の防災担当者も中にはいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、豪雨被害の概要と過去に発生した豪雨被害の事例、企業における主な豪雨対策などを説明していきます。
この記事を読むことで豪雨被害を抑えるポイントを把握できるので、ぜひ読み進めてください。
豪雨がもたらす事業への深刻な被害
国土交通省が発表する「3-1 洪水を受けやすい国土」で説明されているように、日本の年平均降水量は1,718mmですが、これは世界平均の2倍であり、急勾配の河川が多い、急峻な地形で崩れやすい地質という特徴から特に梅雨期と台風期には毎年のように豪雨による深刻な被害が日本各地で発生しています。
「毎年のことだから」と楽観視して、具体的な対策を取っていないと、状況によっては事業に以下のような甚大な被害が発生してしまう危険性があるため、企業を守るために平時から十分に豪雨対策に注力しなければなりません。
- 工場や事業所が浸水したことで重要な設備や機器が損傷し、操業停止や営業停止に陥る
- 製品が浸水で供給できないことによるペナルティと売上の減少
- 復旧対応が長期化することによる顧客離れ
- 豪雨に伴う水害によってサプライチェーンが途絶し、仕入れや出荷ができない
- 豪雨が引き起こした土砂災害に事業所や従業員が住む住宅が巻き込まれる など
近くに河川や海がない場合でも、豪雨対策をしなくても良いということはなく、内閣府の「平成18年〜平成27年 水害(河川)の発生状況」によれば、全国1,741市区町村のうち、10年間で1度も水害が発生していない市町村はわずか3%(60市町村)であり、約半数の地域で10回以上の水害が発生しているため、どのような地域の場合でも平時から豪雨などを想定した水害対策をする必要があります。
豪雨が発生させる主な災害の種類
梅雨期や台風期に特に発生しやすい豪雨ですが、豪雨に伴って以下の深刻な被害をもたらす災害が誘発されるおそれがあるため、事業を守るために豪雨だけでなく、これらの災害に関しても十分に対策しなければなりません。
【外水氾濫】
豪雨などによって河川の水位が上昇したことで堤防から水が溢れ出し、周辺の地域一帯が浸水する災害
【内水氾濫】
豪雨によって、排水路などの排水能力が超えたことで市街地が浸水する災害で、近隣に河川や海がない場合でも発生する
【土石流】
豪雨などによって、山腹や土砂が下流へ一気に押し出される災害で、時速20〜40kmの速度で一瞬のうちに壊滅的な被害を与える
【がけ崩れ】
豪雨や地震などによって、地盤が緩むことで斜面が崩れる災害で、崩れるスピードが早いため、逃げ遅れが発生する場合がある
【地すべり】
地下水の水位が上昇したことで斜面の一部または全てが斜面下方にゆっくり移動していく災害であり、土塊の量が大きく、広範囲にわたって移動するため、甚大な被害が発生する
内水氾濫はマンホールや下水道などの排水能力を超えた場合に起きており、アスファルトで舗装された市街地の道路は土よりも雨水が浸透しづらいために豪雨に伴って内水氾濫が発生する危険性があります。
国土交通省が発表する「令和元年台風第19号による被害等」で説明されているように、令和元年東日本台風(台風19号)の影響で東日本を中心に15都県で内水氾濫が発生し、川崎市の武蔵小杉駅周辺では多摩川から溢れた水が逆流したことで広範囲にわたって深刻な氾濫被害に繋がりました。
今回は簡易的な説明となりましたが、さらに詳しく土砂災害を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
豪雨による水害・土砂災害の危険性が高い場所
局地的に短時間のうちに多量の雨が降るゲリラ豪雨は、予測するのが難しく、浸水対策を準備する猶予がない場合が多いため、状況によっては広範囲にわたって前述した水害・土砂災害による被害を受けてしまうおそれがあります。
ゲリラ豪雨発生時は、河川の近くだけでなく、以下の場所も被災してしまう可能性があるので、水害や土砂災害の発生が予想されている場合はすみやかにその場から離れましょう。
【地下・半地下】
水害による浸水が始まった場合、真っ先に水没してしまうリスクがあるほか、水圧でドアが開かなくなることで避難できなくなるおそれがある
【アンダーパス】
水害発生時によって冠水したアンダーパスに自動車で進入すると、自動車が故障する他、水没によって亡くなってしまう場合がある
【浸水するおそれがある低層階】
内水氾濫・外水氾濫発生時に浸水する低層階に留まっていると、水没や家屋の流出などによって最悪は溺死してしまうおそれがある
【土砂災害危険箇所に指定された場所】
土石流のおそれがある場所を土石流危険渓流、がけ崩れのおそれがある場所を急傾斜地崩壊危険箇所、地すべりのおそれがある場所を地すべり危険箇所と呼び、土砂災害から身を守るためにすみやかに安全な場所へ避難する
状況にあわせた的確な避難方法を選ぶことが重要
安全な場所へ避難というと、避難所を向かうことをイメージする方も中にはいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
避難の方法に水平避難(立ち退き避難)と垂直避難(屋内安全確保)の2種類があり、災害発生時の状況にあわせて、安全確保のために最善と考えられる的確な避難方法を選ぶことが大切です。
水平避難とは、今いる危険な場所から避難所など可能な限り遠くにある安全な場所へ移動することであり、被災するまでに十分な猶予が残されている場合や安全な場所へ到着するまでの時間を考慮して、選びます。
垂直避難とは、今いる建物やすぐ近くにある建物の可能な限り高層階へ移動することであり、被災までに十分な猶予がすでに残されていない場合や高層階に移動すれば災害をしのげることが分かっている場合に選びます。
すでに水害などの災害が発生している状況や見通しの悪い夜間に無理に水平避難を選んだり、高層階でも浸水してしまう危険性がある建物で垂直避難を選んだりすると被災してしまうリスクがあるため、最新の防災情報や実際の状況を把握した上で的確な避難方法を選びましょう。
また、垂直避難は食糧などの防災グッズを備蓄していることが前提となり、防災グッズを用意していない状態で高層階に避難した場合は安全な避難生活を送れないおそれがあるため、早めに水平避難を開始することが望ましいです。
豪雨による甚大な被害を受けた事例
豪雨が発生した場合は深刻な被害を受けるおそれがありますが、具体的にはどういった被害が確認されているのでしょうか。
そこでこの章では過去に豪雨が招いた被害の事例を説明していくので、対策を考える上でぜひ参考にしてください。
西日本豪雨(平成30年7月豪雨)
西日本付近に停滞していた梅雨前線に台風8号などの湿った空気が流れ込んだことで、2018年6月28日から7月8日にかけて、西日本を中心とした日本各地で集中豪雨が発生しました。
四国地方では総降水量が1,800mmを超えるなど、多くの地域で48時間と72時間雨量が当時の観測史上最大値を更新したのです。
この豪雨によって、西日本を中心に日本各地で河川の氾濫や浸水、土砂災害が相次いだことで停電や断水、通行止め、運行休止などが起きただけでなく、死者263人、行方不明者8人、負傷者484人が発生するなど深刻な被害が発生。
当時、自治体では避難などの防災行動を呼びかけていましたが、煩雑であったことなどが原因で避難等の情報が正しく伝わらずに被災してしまった住民がいたため、これを反省点とし、防災情報を分かりやすく伝えるために5段階に分類した警戒レベルを導入しました。
熊本豪雨(令和2年7月豪雨)
本州付近に停滞していた梅雨前線の影響で九州を中心に大規模な線状降水帯が生じたことで7月3日から7月31日にかけて、熊本県を中心とした日本各地で集中豪雨が発生しました。
総降水量は長野県や高知県などでは2,000mmを超え、多くの地域で24時間・48時間・72時間降水量が当時の観測史上最大値を更新し、外水氾濫や内水氾濫、土砂災害が発生したことで死者84人、行方不明者4人、負傷者80人が発生したほか、住家の全半壊4,558棟、住家浸水、13,934棟の深刻な被害が広範囲にわたって発生したのです。
当時はここまでの被害を引き起こすとは想定されておらず、危険性を住民に伝える記者会見を開いたのは集中豪雨に関する特別警報が発表された翌日の7月4日のことでした。
企業における豪雨対策
豪雨が発生するとそれに伴って、取り返しのつかない被害に巻き込まれる危険性があるため、企業を守るために平時から可能な限りの豪雨対策に取り組む必要があります。
この章では、企業における主な豪雨対策を紹介していくので、企業担当者はぜひ読み進めてください。
BCP・防災マニュアルを策定しておく
豪雨が確認された際にすみやかに防災行動を開始するために、あらかじめBCP・防災マニュアルを策定しておきましょう。
BCPとは、災害や事故など企業におけるリスクが発生した際に、その被害を最小限に抑え、事業の継続または早期復旧を図るための計画のことであり、リスク発生時に行う対応を明確に定めておきます。
BCPと防災マニュアルで定めた対応を社員に浸透させるためには、定期的に開催する防災訓練が重要となりますが、同じ内容を繰り返す防災訓練では想定外の事態が発生した際に対応できなくなってしまうため、水害から土砂災害に変更するなど防災訓練を行うたびにシナリオを変更することが大切です。
詳しBCPや防災訓練のシナリオを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
タイムラインで防災行動計画を定める
豪雨による水害は、発生してから被災するまでにタイムラグがあるので、的確に対応するためにはタイムライン(防災行動計画)も有効です。
タイムラインとは、災害発生時の状況を想定し、時系列に沿って的確な防災行動をあらかじめ定めておく計画のことであり、先を見越した対応ができるようになるため、冷静な対応がしやすくなります。
タイムラインでは、災害発生時のタイミングをゼロアワーとし、防災行動を開始するタイミングと完了にかかる時間をリードタイムに設定しますが、災害は想定外の状況に陥る場合もあるため、災害発生時は臨機応変に対応するようにしましょう。
詳しくタイムラインを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
防災情報に注意する
豪雨発生時に的確に判断するために豪雨や豪雨に伴う災害に関する以下の主な防災情報を把握しておきましょう。
【大雨特別警報】
台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量が予想される場合に発表される
【警戒レベル】
ほかに発表される防災情報と連動して行うべき防災行動を分かりやすく伝える5段階に分類された防災情報
【指定河川洪水予報】
河川の氾濫の注意を呼びかけるために、河川の水位を知らせる防災情報で国土交通省大臣や都道府県知事によって指定された洪水発生時の被害が大きい河川のみが対象
【土砂災害警戒情報】
大雨にによって土砂災害が発生する危険性がある場合に発表される防災情報
【土砂災害警戒判定メッシュ情報】
雨や土壌雨量指数または予測に基づいて、5km四方のメッシュ毎に土砂災害の危険性を5段階に分類した防災情報
今回は簡易的な説明となりましたが、さらに上記の防災情報を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ハザードマップを確認する
豪雨が発生すると外水氾濫などの水害が発生するおそれがあるため、平時からハザードマップを十分に確認し、防災行動を取る上での参考にしましょう。
ハザードマップとは、過去に発生した災害履歴に基づいて災害発生時の状況や範囲、安全な避難場所などを記載した地図のことであり、水害や土砂災害、地震など災害の種類別に国土交通省や自治体のHPで公表されています。
水害に関するハザードマップでは、浸水深(浸水の深さ)や氾濫で家屋が倒壊するおそれがある場所、土砂災害が起きる危険性がある地域などが記載されていますが、あくまでも過去の災害履歴に基づいた予測に過ぎないので、場合によっては安全とされていた場所も被災してしまうおそれがあるのです。
災害発生時は何が起こるのか分からないため、ハザードマップでは複数の安全な場所を選んだ上で、1つの目安として参考にするようにしましょう。
リスク情報を早期把握できるFASTALERT
災害発生時は、意思決定に基づいた初動対応をすみやかに開始するために、被害状況などの情報収集を行わなければなりません。
しかし、災害発生時はリソースが限られた状況の中で情報を精査しなければならず、場合によっては対応しきれないおそれがあり、これによって的確な対応ができない可能性があります。
この状況を解決するために自治体や企業では、AI情報収集サービス「FASTALERT」が活用されています。
FASTALERTは、自然災害・事故・事件など自治体や企業におけるリスクが発生した場合にAIが正誤を分析した上でほぼリアルタイムでサービス利用者に提供する仕組みです
弊社ではFASTALERTの紹介資料やSNSで炎上が起きる理由など、企業や自治体の防災担当者が抱えるお悩みを解決するために防災に関する資料を幅広く用意しています。
詳しくご覧になりたい方は、「防災お役立ち資料」から資料をお気軽にダウンロードしてください。
最後に
年間降水量が世界平均の2倍ある日本では、毎年のように豪雨被害が発生しており、平時から豪雨対策を全社でしていなければ、操業停止など深刻な事態に発展してしまうおそれがあります。
この記事を参考にして、豪雨被害を最小限に抑えるために平時から可能な限りの豪雨対策を徹底しましょう。