
企業が行うべき実践的なインフルエンザ対策とその予備知識
目次[非表示]
- 1.おさえておきたいインフルエンザの基礎知識
- 1.1.インフルエンザは3種類に分類される
- 1.2.インフルエンザの3つの感染経路
- 2.企業にインフルエンザ対策が求められている理由
- 3.企業が導入するべきインフルエンザ対策8選
- 3.1.感染者を必ず休ませる
- 3.2.手洗いと緑茶の飲用を徹底する
- 3.3.マスクの着用を促す
- 3.4.定期的に換気する
- 3.5.職場の清掃・消毒を行う
- 3.6.従業員の接触を減らす
- 3.7.定期的にワクチンを摂取する
- 3.8.BCP・防災マニュアルを策定する
- 4.自然災害などリスク情報の収集やBCPで活躍するFASTALERT
- 5.まとめ
- 6.関連お役立ち資料集
毎年、厳しい寒さとなる12月頃からインフルエンザの流行が始まりますが、従業員がインフルエンザに感染した際に企業側で適切な対応がとれないと最悪の場合は集団感染へつながるおそれがあります。
業務に支障をきたすため、きちんとインフルエンザに備えて企業でも対策を行うべきですが、具体的にどのような対策に取り組むべきなのか悩んでいる方も少なくないでしょう。
今回はそんな方のためにインフルエンザの基本や企業で行うべき対策方法などを紹介していきます。
この記事を読むことで効果的なインフルエンザ対策を導入できるようになるので、ぜひ読み進めてください。
おさえておきたいインフルエンザの基礎知識

対策方法を説明する前に、まずはインフルエンザの基本を紹介していきます。どれも参考になる情報ばかりなので、ぜひ読み進めてください。
インフルエンザは3種類に分類される
インフルエンザはA型・B型・C型に分類され、具体的には季節性インフルエンザ、鳥・豚インフルエンザ、新型インフルエンザの3種類があります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
【季節性インフルエンザ】
季節性インフルエンザにはA型・B型・C型があり、流行するのは主にA型とB型です。感染すると急激に高熱・悪寒・倦怠感などの症状を引き起こしますが、あらかじめワクチンを摂取しておくことで重症化を防ぐことができます。
【鳥・豚インフルエンザ】
A型に分類されるインフルエンザで、基本的に鳥類や豚の間で流行しますが、感染した鳥類・豚と接触することで稀に人にも感染することがあります。
【新型インフルエンザ】
A型に分類されるインフルエンザで鳥・豚インフルエンザが変異し、人に感染するようになったインフルエンザです。通常は新型インフルエンザに対して人は免疫を持っていないため、人から人へと感染しやすく世界的なパンデミックが引き起こされるおそれがあります。
新型インフルエンザの例としては1918年〜1919年にかけて世界的なパンデミックが起きたスペイン・インフルエンザ(スペイン風邪)や2009年に世界中で流行した新型インフルエンザなどがあります。
2009年の新型インフルエンザは日本でも多数の感染者が確認されているため、いつ起きてもおかしくないと考えてきちんと対策を立てておかなければなりません。
インフルエンザの3つの感染経路
インフルエンザの感染経路には、飛沫感染・接触感染・空気感染の3種類があります。それぞれの特徴は次のとおりです。
【飛沫感染】
感染者が咳やくしゃみをすると飛び散るインフルエンザのウイルスを含んだ粒子(飛沫)を吸い込むことによって感染します。この飛沫は感染者から1〜2メートル以内にしか飛び散りません。
【接触感染】
インフルエンザウイルスを含んだ飛沫が付着した感染者の手・ドアノブ・机などに健康な方が手で接触し、その手で目・鼻・口などに触ると感染します。乾燥した場所などウイルスにとって好ましい場所の場合、ウイルスが24時間程度生きていることがあります。
【空気感染】
インフルエンザウイルスの飛沫が乾燥することでさらに小さな粒子となって空気中に漂い、この飛沫を吸い込むと感染します。
接触感染の場合は、電車の吊り革やエレベーターのボタンなどにもインフルエンザウイルスの飛沫が付着するおそれがあるので、きちんと対策をしておかないと不特定多数の方が感染してしまいます。
また、従来はインフルエンザの感染経路は飛沫感染と接触感染のみだと考えられていました。
しかし米メリーランド大学が行なった最新の研究によれば、たとえインフルエンザ感染者が咳やくしゃみをしていなくても呼吸をしているだけでインフルエンザウイルスが周囲に拡散されていることが判明したようです。
つまりインフルエンザの空気感染が起きる可能性が高いため、インフルエンザ感染者が現れた場合はすぐに帰宅してもらった方が良いでしょう。
企業にインフルエンザ対策が求められている理由

インフルエンザに感染すると数日間は自宅待機となりますが、感染しているのにも関わらず無理に出社した場合は通勤・勤務中に感染を広げるリスクがあり、社内で集団感染が発生するおそれがあります。
こうなった場合、感染者の人数にもよりますが、人手不足によって事業を通常通りに行うことが難しくなってしまい、感染している人数が多ければ事業の継続が難しくなる場合があります。
そのため、インフルエンザの集団感染に備えてきちんと対策しておくことが大切です。
感染症予防法第18条では、鳥インフルエンザ・新型インフルエンザや結核などの1〜3類感染症の場合は法律によって就業制限などが設けられていますが、5類感染症に分類される季節性インフルエンザは予防措置が取られることはありません。
つまり季節性インフルエンザの場合は感染した従業員を法律によって強制的に休ませることはできませんが、集団感染を防ぐためにきちんと社内でルールを作っておきましょう。
企業が導入するべきインフルエンザ対策8選

ここまでインフルエンザの基本を解説しました。次にこの章では、インフルエンザに備えて行うべきインフルエンザ対策を説明していきます。
感染者を必ず休ませる
インフルエンザの感染者が職場で発生した場合は、集団感染を防ぐために必ず休ませましょう。
社会人の場合、インフルエンザで休ませる日数は決まっていませんが、大学生までの学生の場合は「学校保健安全法」第19条によって以下のように出席停止日数が定められています。
『インフルエンザ(特定鳥インフルエンザおよび新型インフルエンザ等感染症を除く)にあっては発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで』
そのため、上記の法令をもとに従業員を自宅待機させる期間をあらかじめ定めておきましょう。
また職場への集団感染を防ぐという意味で、従業員と同居する家族がインフルエンザになった場合も同じ期間、自宅待機にすると良いでしょう。
解熱後の2日間はインフルエンザウイルスが体内に潜んでいるおそれがあるため、きちんと完治するまでは休ませるべきです。
さらにインフルエンザにかかっても必ず高熱が出るとは限らず、人によっては36度〜37度台の熱で「体調が少し悪い」程度の症状しか起きないケースもあります。
無自覚のまま自己判断で出社してしまうと、他の従業員に感染を広げてしまうおそれがあるので、風邪だと従業員が思っている場合でも万が一に備えて病院に行かせた方が良いでしょう。
手洗いと緑茶の飲用を徹底する
インフルエンザの感染を予防するために普段から手洗いをきちんと行っておきましょう。手洗いは帰宅後や電車など不特定多数の方が接触する場所に触れた後など、頻繁に行います。
手洗いは石鹸を使って15秒以上行うか、60〜80%の濃度の消毒液で両手をすり合わせることでインフルエンザの接触感染のリスクを下げることができるでしょう。
うがいは喉の粘膜を清潔に保ったり、乾燥を防ぐ効果がありますが、インフルエンザのウイルスは最短で20分以内に感染してしまいます。
20分おきにうがいを行うのがベストですが、現実的ではないため、20分おきに少量の緑茶を飲むようにしましょう。
伊藤園と静岡県立大学薬学部が共同で行った「研究開発レポート」によれば、緑茶に含まれているカテキンなどの成分に季節性インフルエンザや新型インフルエンザのウイルスを抑制する効果があることが判明したようです。
そのため、特に季節性インフルエンザが流行しやすい季節は、手洗いと緑茶の飲用を徹底しておくと良いでしょう。
マスクの着用を促す
インフルエンザの感染が疑われる従業員がいる場合は、飛沫感染を防ぐためにマスクを着用してもらいましょう。
一般的なガーゼマスクでは生地の目よりもインフルエンザウイルスの方が小さく防ぐことができないため、ガーゼマスクよりも網目の密度が高い不織布のマスクを選ぶと良いでしょう。
またインフルエンザの予防という観点でマスクをつける方もいますが、マスクと肌の隙間から飛沫を吸い込んでしまうおそれがあります。
さらに厚生労働省が発表した「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」によれば健康な場合にマスクを着用することでのインフルエンザの予防効果は現時点では十分な科学的根拠がないようです。
そのため、マスクをつけたからといって過信せずに手洗いなどその他の対策も怠らないようにしましょう。
定期的に換気する
インフルエンザの空気感染を防ぐために定期的に部屋の換気をしましょう。汚れた空気は喉の粘膜を痛め、ウイルスに対しての抵抗力を低下させてしまいます。
またインフルエンザに感染した従業員がくしゃみや咳をした場合は、インフルエンザウイルスが長時間空気中を漂うので、感染を防ぐために1時間に1回などと決めて換気しましょう。
またインフルエンザウイルスは乾燥した空気の中で増殖していくという特徴があります。
そのため、特に乾燥しやすい冬場は加湿器を使用するなどして部屋の湿度を60〜80%程度に保つようにしましょう。
職場の清掃・消毒を行う
社内で従業員がインフルエンザを発症した場合は、インフルエンザの接触感染を防ぐためにその従業員のデスクや触れたと思わしき場所の清掃と消毒を行いましょう。
その際は万が一のために備えて不織布マスクとゴム手袋を着用した上で消毒し、清掃に使った雑巾などは感染を防ぐために素手で触らないようにします。
使用する消毒剤は、以下の3点などがインフルエンザウイルスに有効です。
- 次亜塩素酸ナトリウム
- イソプロパノール
- 消毒用エタノール
従業員の接触を減らす
季節性インフルエンザが流行っている場合は、従業員同士の集団感染を防ぐために以下の3点のように従業員同士が接触する機会を減らすと良いでしょう。
- フレックスタイムやリモートワークを設けて、一度に勤務する従業員を減らす
- 食堂の人数を減らすために時間差のランチタイムを設ける
- 対面の会議ではなく、可能な限り電話やインターネットによる会議を行う
インフルエンザの飛沫感染の範囲は1〜2メートルですが、上記のように他人と距離をとるように対策をしておけば、無自覚なインフルエンザ感染者がいた場合でも飛沫感染のリスクを大幅に減らすことができます。
定期的にワクチンを摂取する
インフルエンザの感染を防ぐために定期的にワクチン摂取を行いましょう。
ワクチンにインフルエンザウイルスによる感染を完全に抑制する効果はありませんが、インフルエンザの重症化を防ぐことができます。
企業によっては予防接種の費用補助制度を定めている場合もありますが、従業員の自己判断に任せてしまうと多忙などを理由に予防接種を受けない従業員も現れてしまうため、業務時間内に時間を作り各グループに従業員を分けて予防接種に行かせると良いでしょう。
BCP・防災マニュアルを策定する
インフルエンザによる集団感染も災害の1つに含まれており、具体的には特殊災害のBiological(生物)に分類されます。
そのため企業でインフルエンザの集団感染が発生した場合に備えて、災害から事業や従業員を守るBCP・防災マニュアルを策定しておきましょう。
BCPとは災害や事故などのトラブル発生時に事業の継続または早期復旧を図る計画のことです。
このBCPをきちんと導入しておかないとトラブル発生時に冷静に対処できず、迅速に事業を復旧させることが難しくなってしまいます。
BCPと防災マニュアルの違いは、BCPが資金難など災害を含めた事業に悪影響を及ぼすありとあらゆるトラブルを対象にしているのに対して、防災マニュアルは災害から建物や従業員を守る役割を持っているのです。
つまり、BCPの中に防災マニュアルが含まれていると言えるのですが、徹底的に対応を行うという意味でBCPと防災マニュアルの両方を策定しておくと良いでしょう。
さらに詳しくBCPや防災マニュアルを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
自然災害などリスク情報の収集やBCPで活躍するFASTALERT
災害発生時は、意思決定に基づいた初動対応をすみやかに開始するために、被害状況などの情報収集を行わなければなりません。
しかし、災害発生時はリソースが限られた状況の中で情報を精査しなければならず、場合によっては対応しきれないおそれがあり、これによって的確な対応ができない可能性があります。
この状況を解決するために自治体や企業では、AI情報収集サービス「FASTALERT」が活用されています。
FASTALERTは、自然災害・事故・事件など自治体や企業におけるリスクが発生した場合にAIが正誤を分析した上でほぼリアルタイムでサービス利用者に提供する仕組みです。
弊社ではFASTALERTの紹介資料やSNSで炎上が起きる理由など、企業や自治体の防災担当者が抱えるお悩みを解決するために防災に関する資料を幅広く用意しています。
詳しくご覧になりたい方は、「防災お役立ち資料」から資料をお気軽にダウンロードしてください。
まとめ
今回はインフルエンザの基本や具体的な企業のインフルエンザ対策などを解説しました。最後にもう一度おさらいすると、重要なポイントには以下の3点があげられます。
- インフルエンザの空気感染が起こるおそれがある
- インフルエンザに感染しても必ずしも高熱が出るとは限らないため、自己判断は禁物
- 健康な方が着用するマスクのインフルエンザの予防効果は、現状は科学的根拠に乏しい
この記事を参考にして集団感染を防ぐために、きちんとインフルエンザ対策に取り組みましょう。