
BCPが病院で導入必須な理由と覚えておきたい基礎知識
目次[非表示]
- 1.覚えておきたいBCPと病院の関係
- 1.1.そもそもBCPとは何なのか
- 1.2.病院でのBCP導入は大切
- 2.病院は2種類に分類される
- 3.病院にBCPを導入する8つの流れ
- 3.1.①検討組織の設置
- 3.2.②現況の把握
- 3.3.③被害の想定
- 3.4.④通常業務の整理
- 3.5.⑤応急業務などの整理
- 3.6.⑥優先業務の確認と設定
- 3.7.⑦概要表の文書化
- 3.8.⑧最終的なBCPとしてまとめる
- 4.災害拠点病院が被災時に向けて準備するべき4つの体制
- 4.1.外部・内部との通信バックアップ
- 4.2.災害対策本部の設置
- 4.3.トリアージスペースと他の医療機関との連携
- 4.4.ライフラインのバックアップ
- 5.自然災害などリスク情報の収集やBCPで活躍するFASTALERT
- 6.最後に
- 7.関連お役立ち資料集
災害時、BCPは一般企業だけでなく、病院においても非常に重要な役割を果たしますが、意外にも病院でBCPが導入されていないケースが多いのです。
ここでは、そんなBCPの基本と病院での採用が重要な理由、導入する手順などを紹介していきます。
この記事を読むことで、BCPの重要性が分かり、いざという時に頼りになるはずです。
覚えておきたいBCPと病院の関係

まずはBCPの基本と病院での重要性を説明していきます。どれも大切な内容になるので、じっくり読んでみてください。
そもそもBCPとは何なのか
BCPと聞いてもピンと来ない、という方は少なからずありません。
BCP(事業継続計画)とは、災害や事故などの緊急事態が起きた際に、大切な事業がストップしないよう、または早期復旧を図るための計画です。
「Business Continuity Plan」の頭文字をとって、「BCP」と呼ばれています。
このBCPを導入しないまま災害などの緊急事態を迎えると、適切な処置が行えずにさらなる混乱を招く可能性が高い上、従業員や顧客の生命を脅かすリスクがあるのです。
BCPを使って普段から従業員に浸透させておけば、非常時でも冷静に対応できるようになるでしょう。
現在、BCPの導入を義務付ける法律や条例はありませんが、事業の信頼や従業員・顧客の安全を確保するためにBCPの採用は必要不可欠となります。
さらに詳しくBCPを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
病院でのBCP導入は大切
病院でのBCP採用を策定することは非常に重要になります。災害に見舞われたとしても、病院は大量の患者をできうる限り診察しなければなりません。
その際には主に以下4点のトラブルが考えられ、通常の業務が制限されるのです。
- 医師が出勤できないことなどによる人手不足
- 停電や断水などライフラインの途絶
- 指揮系統の乱れ
- 医療設備の破損
そのような状況を踏まえて病院はBCPを採用し、普段からいつ災害が起きても冷静に対応できるように構えておく必要があります。
病院は2種類に分類される

病院を大まかに分けると、次の2つに分けられます。
- 一般医療機関
- 災害拠点病院
ここではそんな2種類の病院の違いを解説していくので、ぜひ目を通してみてください。
一般医療機関
一般医療機関とは、災害拠点病院を除いた病院や診療所など医療を提供する施設のことです。
災害時は、後述する災害拠点病院の支援を受けられます。
災害拠点病院
災害拠点病院とは、外来患者の診察などの他に地震や台風などの自然災害発生時に災害医療を行う医療機関を支援する病院のことです。
国立病院機構災害医療センターによれば、この災害拠点病院には主に以下4つの機能を備えています。
- 24時間体制で被災地域の負傷者の受け入れや搬出
- ヘリコプターや緊急車両などを利用しての患者の受け入れや搬出
- 消防機関(緊急消防援助隊)と連携した医療派遣チーム
- 十分な医療設備や医療体制、情報システム、ヘリポートなど
病院にBCPを導入する8つの流れ

東京都福祉保健局が発表した医療機関向けBCP策定ガイドラインでは、8つの項目に分けて導入手順が紹介されています。
ここではそんな病院でBCPを導入するための8ステップを解説していきます。しっかりと説明していくので、これからBCPを導入しようとしている方は、ぜひ参考にしてください。
①検討組織の設置
まずは病院長など責任者が災害時でも可能な限り医療を続けると表明した上で検討組織を設置します。
災害時には、十分な支援を提供していく体制を確保するために「診療部門」や「事務部門」など、さまざまな部門から幅広くメンバーを選定する必要があります。
②現況の把握
次に病院がどの程度、災害に対して備えができているのか、把握しておく必要があります。
- 指揮命令系統の有無
- 人員の確保状況
- 診察スペースや医療機材の保有状況
- 搬送手段の確認
- 耐震化の状況
- 電気、水道、ガスなどライフラインの状況
など、さまざまな角度から徹底的に確認しておきましょう。
③被害の想定
各自治体の被害想定を参考にしながら、建物や医療設備の被害状況、発生する傷病者数を想定します。
夜間に災害が発生した場合は通常よりも人員が不足することが考えられるため、さまざまな状況から想定しておくと災害時にもより冷静に対処できるようになるでしょう。
④通常業務の整理
各部門ごとに通常業務を列挙して、各業務内容とその実施のために必要な資源を洗い出しましょう。
⑤応急業務などの整理
通常業務の部門ではなく、災害時に組織される部門ごとに各業務内容とその実施のために必要な資源を整理します。
⑥優先業務の確認と設定
各部門で整理した通常業務と災害応急対策業務などを統合し、優先業務を設定します。
危険性の高い入院患者の対応は必ず行う、新規の入院患者の受け入れは行わないなど細かく優先業務を決めていきましょう。
⑦概要表の文書化
優先業務の目標時間・実施レベルの設定をし、病院全体で調整した上で具体的な行動を文書にします。
⑧最終的なBCPとしてまとめる
文書化した上で最終的なBCPとして基本的な考え方を定めます。以上がBCPを導入するための8ステップです。
より詳しくBCPの策定手順を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
災害拠点病院が被災時に向けて準備するべき4つの体制

次に災害拠点病院で優先度の高い4つの業務を説明していきます。
外部・内部との通信バックアップ
的確な判断を素早く行う必要があるため情報収集は不可欠です。
しかし災害時ではこれらの情報収集手段が限られてしまう可能性が高いので、以下6つのように通信バックアップを用意しておきましょう。
【外部の通信バックアップ】
- 防災行政無線
- 災害時優先電話
- 衛星電話
【内部の通信バックアップ】
- トランシーバーや情報端末の貸出
- 伝令の実施
- 館内放送の実施
災害対策本部の設置
BCPに対応するため、災害対策本部を設置し、役割分担をします。
災害対策本部では、マニュアルで定めた体制の構築のほか、患者家族やマスコミの対応要員を配置すると良いでしょう。
トリアージスペースと他の医療機関との連携
災害に備えてトリアージスペースや重症患者の診察スペースを確保しておくことが大切です。
また災害時では人手不足の可能性もあるため、行政機関に対して医療応援チームの派遣要請をできるように準備しておきましょう。
ライフラインのバックアップ
災害時では建物や設備の被害だけではなく、停電や断水などライフラインの供給が停止することも十分に考えられます。
そんな場合に備えて以下4つのように代替手段を確保しておきましょう。
- 発電機
- 井戸水
- ボイラー燃料の切り替え
- 仮説トイレやシャワーの設置
自然災害などリスク情報の収集やBCPで活躍するFASTALERT

災害発生時は、意思決定に基づいた初動対応をすみやかに開始するために、被害状況などの情報収集を行わなければなりません。
しかし、災害発生時はリソースが限られた状況の中で情報を精査しなければならず、場合によっては対応しきれないおそれがあり、これによって的確な対応ができない可能性があります。
この状況を解決するために自治体や企業では、AI情報収集サービス「FASTALERT」が活用されています。
FASTALERTは、自然災害・事故・事件など自治体や企業におけるリスクが発生した場合にAIが正誤を分析した上でほぼリアルタイムでサービス利用者に提供する仕組みです。
弊社ではFASTALERTの紹介資料やSNSで炎上が起きる理由など、企業や自治体の防災担当者が抱えるお悩みを解決するために防災に関する資料を幅広く用意しています。
詳しくご覧になりたい方は、「防災お役立ち資料」から資料をお気軽にダウンロードしてください。
最後に
今回は、BCPの予備知識と病院でBCPが大切な理由、BCPの導入手順などを解説しました。
最後にもう一度、おさらいすると大切なポイントには、以下の2点が挙げられます。
- 災害時、病院は通常業務よりも負担がかかるため、BCPの導入が重要
- 通信システムやライフラインのバックアップを用意しておく
この記事を参考にして、いざという時のためにBCPの導入を検討してみてください。