
有効な火災対策と命を守るために覚えておきたい火災の基本
目次[非表示]
- 1.火災とは
- 2.火災が発生する主な5つの原因
- 3.油断できない一酸化炭素中毒
- 4.効果的な7つの火災対策
- 4.1.防災マニュアルを作成する
- 4.2.防災設備の定期点検を必ず行う
- 4.3.全員が初期消火できるようにしておく
- 4.4.電気器具を正しく使う
- 4.5.一酸化炭素や煙を絶対に吸わない
- 4.6.避難経路を確保する
- 4.7.感震ブレーカーを導入する
- 4.8.防炎品を使う
- 5.自然災害などリスク情報の収集やBCPで活躍するFASTALERT
- 6.まとめ
- 7.関連お役立ち資料集
※2021年12月14日更新
いつ起きてもおかしくない災害の1つである火災。火災が発生すると建物はおろか命を落とす事態にも繋がりかねないので、きちんと対策を立てておかなければなりません。
しかし、具体的にどのような火災対策が適切なのか悩んでいる方もいるでしょう。
今回はそんな方のために火災の基本とその原因、具体的な火災対策を解説していきます。この記事を読むことできちんと火災に対処できるようになるので、ぜひ読み進めてください。
火災とは

火災とは火によって建物や部屋の一部が燃える災害のことです。
総務省消防庁が発表した「自衛防災組織等の標準的な教育テキストについて」では火災を以下のように定義しています。
『火災とは人の意図に反して発生し若しくは拡大し、または放火により発生して消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために消火施設またはこれと同等の効果のあるものの利用を必要とするもの、または人の意図に反し発生若しくは拡大した爆発現象をいう』
火災は毎年多くの住宅やオフィスなどで発生しており、ちょっとした不注意が火災へつながるおそれがあるため、きちんと対策を立てておかなければなりません。
1年の中で最も火災が発生する季節は冬であり、冬に多くの火災が発生する原因としては空気の乾燥と暖房器具の使用があげられ、一般的に空気が乾燥しているとちょっとした熱源でも火の拡大が早くなると言われています。
また肌寒い気温が続く冬は防寒のために暖房器具の使用が増えますが、それに伴って暖房器具の誤った使用も多くなるので、火災の件数も増加するのです。そのため、特に冬は火災に注意しましょう。
火災が発生する主な5つの原因

次に火災が発生する主な原因を紹介していきます。どれも参考になる情報ばかりなので、ぜひ読み進めてください。
暖房器具
東京消防庁が発表した「火災の概要」によれば暖房器具の誤った使用は、タバコの不始末とガステーブル(ガスコンロ)の不注意についで3番目に多い出火原因です。
東京都生活文化局生活部の「ストーブの安全な使用に関する調査報告書」によると、暖房器具では石油ストーブが危険だと考えている方は全体の80%で電気ストーブに危機意識を抱いている方はわずか4%です。
しかし暖房器具では電気ストーブの誤った使用による火災が最も多くなっています。
電気ストーブは火を使わずに電熱によって部屋を暖めるため、安心して物と電気ストーブの距離を十分に離さなかったり、就寝時に電源をつけっ放しにしたりする方もいますが、火災が発生する可能性が高いです。
オフィスなどでデスクの足元に置いている小型の電気ストーブなどの電源を切り忘れて帰宅してしまい火災につながる場合もあります。
また石油ストーブに火がついたまま給油する方もいますが、灯油がこぼれると火災が発生する可能性が非常に高いです。そのため、暖房器具は必ず使用方法を守りましょう。
タバコの不始末
火災の原因ではタバコの不始末が多いです。タバコの火をしっかり消したと思っても火が出ていない無煙燃焼が起きている場合があり、周囲の物を焦がしながら時間をかけて発火します。
無煙燃焼が発生しているとタバコを吸ってから数十分〜数時間後に発火するため、外出や就寝で気づかないことが多く、被害が拡大するおそれがあるのです。
また寝タバコ(ベッドや布団の上で横になってタバコを吸うこと)をするとタバコの火種が気づかないうちに布団などに落ちる場合があり、そうなると就寝中に大量の煙を吸って一酸化中毒に陥り意識のないまま焼死してしまうケースがあるのです。
そのためタバコを吸う際は必ず所定の喫煙所や灰皿を使用し、吸い殻には水をかけて確実に火を消しておきましょう。
電気火災
住宅だけでなくオフィスでも発生する火災としては電気火災があげられます。
住宅やオフィスなどで電源タップをタコ足配線で使用しているケースもありますが、電源タップの使用可能電力は基本的に1,500ワットまでに定められており、これを超えて使用すると電源タップが熱を帯びて発火するおそれがあるのです。
電源タップのコンセントにまだ空きがあると言っても使用可能電力を超えてしまえば危険性が高いので、使用は控えておきましょう。
もちろん電源タップでどんなにタコ足配線を行なっていたとしても、全て使用可能電力内で収まっていれば火災の心配はありません。
そのため、電源タップの使用可能電力内かどうかを接続する際によく確認しておきましょう。
※使用可能電力1,500ワットの電源タップに延長で使用可能電力1,500ワットの電源タップを繋いでも3,000ワットに上がることはなく、使用可能電力は1,500ワットのままです。
また延長しても壁のコンセントに最も近い電源タップの使用可能電力が全体の電源タップに適応されるので、注意してください。
通電火災
通電火災とは、地震や台風などの災害によって途絶した電力が復旧した際に損傷した電子機器や暖房器具が可燃物に触れていたり、ショートを起こしたりすることなどが原因で発生する火災のことです。
地震などの災害による停電後は別の安全な場所へ避難していることも多く、誰もいない状況で火災の発生に気づかずに、周囲を巻き込んでほぼ同じタイミングで火災が発生する深刻な同時多発火災に発展してしまうおそれがあります。
実際に東日本大震災や阪神・淡路大震災などの過去の災害でも複数回にわたって確認されており、阪神・淡路大震災では157件の火災のうち33件、東日本大震災では110件の火災のうち71件が通電火災であったことが調査の結果で分かっています。
収れん火災
収れん火災はオフィスなどに火の気がなかったとしても発生します。
収れん火災とは太陽光がペットボトルや花瓶などに反射・屈折し、そこに可燃物があると発火する現象のことです。
理科の実験で行なった虫眼鏡で太陽光を1点に集めて発熱させるのと同じ原理となっています。
消防防災博物館が『収れん火災ペットボトルの「収れん」による火災事例について』で行なった実験によれば、太陽光を反射させた水入りペットボトルだと約1分で可燃物が発火することが判明しました。
収れん現象は暑い夏場に発生すると考えている方もいますが、太陽光の高度が下がって部屋の奥まで直射日光が届く冬場の方が多く発生しています。
あまり頻繁に発生しないと思って軽視する方もいますが、実際に2013年にイギリス・ロンドンでガラス張りの高層ビルが太陽光を反射し、高級車や店のカーペットの一部を燃やすという事件がありました。
条件さえ整えば収れん火災はいつ発生してもおかしくないと言えるので、窓際や直射日光が当たる場所に以下のようなものは置かないようにしましょう。
- 水が入ったままのペットボトル
- 調理用のステンレス
- 水が溜まった状態のビニールハウスの屋根
- 花瓶
- 水槽
- 鏡 など
放火
火災が起きる原因として毎年上位に来ているのが放火です。放火は基本的に人目が少ない夜間に行われているため、火災の発見が遅れて死者が発生してしまう場合もあります。
放火は可燃ゴミや平積みになった新聞・雑誌、バイクカバーなど外に置かれているものに着火されており、放火を防ぐためにきちんと対策を立てておくことが重要です。
具体的にはゴミは夜間ではなく決められた曜日の朝に出したり、人感センサーが搭載されたライトを家の周りに付けておいたりすると良いでしょう。
油断できない一酸化炭素中毒
総務省消防庁の「平成30年版 消防白書」で説明されているように、火災による死因は火傷に次いで、一酸化炭素中毒・窒息だと判明しており、火災発生時は煙を過度に吸い込まないように注意しなければなりません。
火災発生時の煙には無味無臭で有毒な一酸化炭素(CO)が含まれており、一定量を吸い込むと、一酸化炭素中毒として頭痛やめまいなどの症状が現れ、吸い込み続けると心停止に陥ってしまうのです。
一酸化炭素中毒の症状の重さは、一酸化炭素の濃度と吸い込む時間に比例しており、濃い煙濃度だと短時間吸っただけで意識不明などの深刻な中毒症状が起きてしまう場合があります。
火災発生時に逃げ遅れてしまうと一酸化炭素を含む煙を吸い込み続けることで意識不明のまま焼死するおそれがあるため、煙が天井に張り付いているうちに迅速に避難するようにしましょう。
火災における一酸化炭素中毒をさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
効果的な7つの火災対策

ここまで火災の基本と発生する原因を紹介しました。次に火災に対する対策を説明していきます。
防災マニュアルを作成する
企業の場合は、いつ起きてもおかしくない火災に備えてきちんと防災マニュアルを作成しておきましょう。
防災マニュアルには災害などのトラブルが発生した場合の行動を具体的に記載しておき、あらかじめ訓練や教育をとおして従業員に浸透させておきます。
また訓練終了後に必ず防災マニュアルを見直し改善していくことで、より効果的な防災マニュアルに近づいていきます。
この防災マニュアルを作成していないまま災害が発生すると適切な判断ができず、迅速に避難できなくなるおそれがあるので注意しておきましょう。
ここでは簡易的な紹介となりましたが、より詳しく防災マニュアルを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
防災設備の定期点検を必ず行う
火災発生時に被害を拡大させないようにオフィスに設置されている設備は必ず定期的に点検を行いましょう。
防災設備の点検は消防法や建築基準法などの規定によって所持者・管理者・占有者が維持・管理することを義務付けられています。
点検するタイミングは以下のように定められているので、必ず行いましょう。
- 作動点検・外観点検・機能点検:6ヶ月ごと
- 総合チェック(実際に設備を作動させて確認):1年ごと
火災発生時に防災設備が作動しないと被害が拡大するばかりか、最悪の場合は命を落としてしまうので、点検のタイミング以外でも何か不具合を見つけた場合は必ず対応しましょう。
防災設備の種類などを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
全員が初期消火できるようにしておく
火災を発見してから消防署に連絡しても消防隊の到着までに時間がかかるため、その間に自分たちで初期消火をしなければなりません。
そのため、火災による被害拡大を防ぐために全員が迅速に初期消火を行えるようにきちんと訓練しておきましょう。
一般的に初期消火は最初の3分が勝負だと言われています。
万が一天井まで燃え広がってしまった場合は、自分たちの力だけでは消火が難しいので、無理に初期消火を続けようとせずにただちに中止して避難しましょう。
電気器具を正しく使う
先ほども説明したようにたこ足配線となっている電源タップは使用可能電力をオーバーしているおそれがあるため、繋いでいる製品がどのぐらいの消費電力なのかをよく確認しておきましょう。
まだ使えていたとしても長年の使用で電源タップに割れやコード部分が折れ曲がっている場合は、発火する可能性が高いので、買い換えます。
また長年コンセントを差しっぱなしにしていてコンセントの差込口に埃がたまっていると、トラッキング現象で発火するおそれがあります。
トラッキング現象とは、コンセント付近についた埃が湿気を吸収することで漏電し、電源タップなどが発火することです。
冷蔵庫やテレビなど埃が溜まりやすい箇所や洗面所の洗濯機など湿気を帯やすい箇所はトラッキング現象が発生しやすくなるので、定期的に清掃を行なったり、コンセントカバーを取り付けると良いでしょう。
一酸化炭素や煙を絶対に吸わない
火災発生時は大量の一酸化炭素が発生します。
火災では直接的な火傷による死亡ではなく一酸化炭素中毒で意識不明になった後で焼死したり、逃げ遅れて煙を吸い込み続け一酸化炭素中毒で亡くなる場合が非常に多いのです。
一酸化炭素は無色無臭なので発生していることが分かりづらく、少量の一酸化炭素を吸い込んだだけで頭痛やめまいなどの症状が発生し、さらに症状が進むと失神や中毒死をしてしまうという極めて毒性の強い物質です。
火災現場から逃げられなかった方の中には避難中に一酸化炭素中毒に陥り、逃げようとしても身体が動かずに亡くなってしまったケースもあります。
また煙に含まれる微粒子が肺に入ってしまうと窒息するおそれがあるのです。そのため、なるべく一酸化炭素や煙を吸い込まないように避難しましょう。
具体的には以下の3つのような対策があります。
- なるべく呼吸は浅くし、一酸化炭素を吸い込みすぎないように大声は出さない
- 濡れたハンカチやタオルで鼻と口を覆う
- ほふく前進のように姿勢を低くし避難する
火災発生の初期の段階では一酸化炭素が含まれた煙は上方へ向かう特性があります。
そのため、床に近い部分では煙が薄くまだ空気が残っている状態なので、姿勢を低くしながら移動すれば一酸化炭素の吸入を最小限に抑えながら避難できます。
しかし時間が経つにつれて煙が濃くなると、空気よりも質量が重くなることで天井に留まっていた煙が一斉に床へ降りてきます。
そうなると周囲がほとんと何も見えない状態となり、逃げ遅れてしまう可能性が高いので、火災発生時は迅速な避難が重要です。
避難経路を確保する
火災発生時に迅速な避難をするためにオフィスや住宅のレイアウトを見直しておきましょう。
具体的には出入り口や非常階段などの避難経路付近には、キャビネットなどの物を置かないようにします。
点検や非常時以外では使わない排煙窓がキャビネットなどで塞がっているオフィスも多々見受けられるので、必ずスムーズに排煙窓を開けられるようにスペースを開けましょう。
また建築基準法の第119号ではスムーズに避難できるように廊下の幅を以下のように定めています。
- 廊下の片側に部屋がない場合:1.2m以上の幅を確保
- 廊下の両側に部屋がある場合:1.6m以上の幅を確保
2001年に起きた歌舞伎町ビル火災では、唯一の避難経路であった非常階段にロッカーなどが設置され塞がっており、荷物が邪魔となって避難できずに44名の方が亡くなられました。
感震ブレーカーを導入する
前述した通電火災を防ぐためにも、あらかじめオフィスや工場に感震ブレーカーを導入しておきましょう。
感震ブレーカーとは、設定値以上の地震の揺れを感知した場合に自動的にブレーカーを落として電力の供給を停止するための装置のことであり、電力の復旧時に発生する通電火災を防ぐために有効です。
感震ブレーカーには、地震の揺れを感知した場合に即座に電力を遮断するタイプと揺れを感知してから電力を遮断するまでに一定時間の猶予があるタイプがあり、迅速に避難したり、安全に電力設備を停止させたりしたい場合は一定時間の猶予がある感震ブレーカーを選びましょう。
防炎品を使う
あらかじめオフィスや住宅で防炎品を使っておくと火災が発生した際に火の拡大を最小限に抑えることができます。
防炎品は燃えづらい素材で作られており、もし着火したとしても自己消化性を備えているため、火が拡大することがありません。
防炎品にはブラインドやパーテーション、バイクカバー、布団など様々な製品が揃っているため、万が一のために備えてオフィスや住宅など状況に応じて準備しておきましょう。
※防炎品には日本防災協会が認定した証の防炎ラベルが貼られています。
自然災害などリスク情報の収集やBCPで活躍するFASTALERT
災害発生時は、意思決定に基づいた初動対応をすみやかに開始するために、被害状況などの情報収集を行わなければなりません。
しかし、災害発生時はリソースが限られた状況の中で情報を精査しなければならず、場合によっては対応しきれないおそれがあり、これによって的確な対応ができない可能性があります。
この状況を解決するために自治体や企業では、AI情報収集サービス「FASTALERT」が活用されています。
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まとめ
今回は火災の基本とその原因、火災の効果的な対策を紹介しました。本記事の重要なポイントには、次の3点があげられます。
- 暖房器具の使用や空気の乾燥で冬に火災が多く発生しやすい
- 暖房器具では電気ストーブによる出火が最も多い
- 火元がなくても収れん火災が発生するおそれがある
この記事を参考にしてきちんと火災に備えておきましょう。