発災時の正常性バイアスが招くリスクと悪影響を防ぐ対策

この記事をお読みになっている防災担当をされている方は、正常性バイアスという言葉を知っていても、それがどのように会社の事業継続性に影響するかを詳しく知りたいと情報を探していらっしゃるのではないでしょうか。
正常性バイアスとは、誰にでもおこりえる心理的防衛反応のことで、直面している危機的状況から現実逃避して正常な状態であると半ば自動的に認識しようとしますが、これが過度に働いた場合は、被害の拡大を招くおそれがあります。
そこで今回は発災時における正常性バイアスのリスクと働きによる悪影響を防ぐための方法などを説明していきます。
この記事を読めば正常性バイアスを対策する上でのヒントが分かるので、的確な防災対応を行えるようになるでしょう。
災害心理学の正常性バイアスとは?

正常性バイアスとは、自然災害など予想外のリスクが発生した場合に状況を過小評価してしまう心の働きのことです。
正常性バイアスは、想定外の事態に巻き込まれたことによるストレスを回避するために起こる防衛反応であり、人間の基本的な心理なので、どのような方にでも働きます。
しかし、この正常性バイアスが行き過ぎると「大したことがない」と楽観的に錯覚し、正常な判断ができなくなってしまうのです。
災害などのリスク発生時に的確な判断を下すためには、正常性バイアスによる悪影響を可能な限り抑えるために平時から十分に訓練しておきましょう。
正常性バイアスが招く災害時のリスク

では、災害発生時に正常性バイアスが過度に働いた場合はどのようなリスクが生じてしまうおそれがあるのでしょうか。
そこで、この章では正常性バイアスが招く主な2つのリスクを説明していきます。
災害に巻き込まれるおそれがある
災害発生時に正常性バイアスが悪い方向に働いた場合は、災害から逃げ遅れるばかりか、最悪は亡くなってしまうおそれがあります。
災害発生時は身の安全を確保するために、すみやかに安全な場所へ避難する必要があります。
しかし、正常性バイアスの悪影響で誰も避難を始めなければ、周囲もそれに同調して「まだ誰も避難してないから大丈夫」と思い込むことによって、迅速に避難できず、被害に巻き込まれてしまう可能性が高くなるのです。
的確な対応ができない、対応が遅れる
正常性バイアスが過度に働くと、状況を正常に把握できないことで的確な判断や対応が取れないおそれがあります。
災害発生時は状況を認識し、被害を少しでも抑えるために直ちに初動対応を開始しなければなりません。
災害発生時に正常性バイアスの悪影響で、万が一、置かれた状況を正しく認知できなかったり、判断に遅れが生じた場合は、初動対応の開始が遅れることで事業や従業員に取り返しのつかない事態を招きかねないのです。
正常性バイアスによって被害が拡大した事例

災害発生時に正常性バイアスが過度に働くと、具体的にどのような被害が発生してしまうのでしょうか。
この章では過度な正常性バイアスが引き起こした災害発生時の被害を説明していくので、ぜひ参考にしてください。
東日本大震災
この災害では、地震による大規模な津波の到達までに1時間の猶予があり、自治体によって警報も発表されていました。
しかし、津波警報を認知していながらも正常性バイアスの働きによって、状況を見誤って、避難しない方も多くいたのです。
その後、津波の到達を目撃してから事の重大さを認識し、避難を始めましたが、間に合わなかったことで結果的に多くの命が犠牲になりました。
西日本豪雨
この豪雨では、豪雨の発生前から気象庁によって大雨特別警報が発表されていました。
しかし、住民の大半が河川の氾濫など水害のリスクを心配しておらず、結果的に災害から逃げ遅れてしまったのです。
また堤防の決壊などによって家屋の浸水が始まっている状況にも関わらず、「自分は大丈夫」だと思い込み、安全な場所に避難をしなかったことで多くの方が亡くなりました。
災害発生時の正常性バイアスへの対策

正常性バイアスは想定外の事態に陥った場合に働くおそれがあるため、どのような事態に陥っても対処できるようにしておくことが正常性バイアスの対策を考える上で大切です。
そこでこの章では過度に正常性バイアスが働くことを防ぐための対策を説明していくので、ぜひ読み進めてください。
防災訓練を定期的に実施する
定期的に防災マニュアルなどに基づいた防災訓練を実施し、災害発生時に的確な対応を行えるようにしておきましょう。
もちろん、同じ内容を毎回のように繰り返す形骸化した防災訓練では意味があるとは言えず、想定外の事態が発生した場合に対応できません。
防災訓練で使うシナリオを火災から地震へ変更するなど訓練の度に内容を変更し、様々な対応を学ばせることが重要です。
詳しく防災訓練シナリオを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
防災リテラシーを向上させる
想定外の事態が発生した場合でも冷静に対処できるように防災リテラシーを総合的に鍛えておくと良いでしょう。
防災リテラシーとは、防災に関する正しい知識を持ち、災害発生時に適切な対応を取る力のことです。
この防災リテラシーを高めるためには、災害の種類や状況を平時から把握しておくことはもちろん、防災教育ツールなどで想定外の事態を少しでも無くしておく必要があります。
詳しく防災リテラシーやその向上方法を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
災害時は率先避難者になる
自然災害などのリスク発生時は、率先避難者として積極的に周囲の避難を呼びかけましょう。
率先避難者とは、自然災害などのリスク発生時、周囲に避難を呼びかけて、積極的に避難をする方のことです。
災害発生時に誰も避難を始めなければ、周囲に正常性バイアスが働くことで「大したことがないんだ」と錯覚し、被害に巻き込まれてしまうリスクが高まってしまいます。
そんな状況を打破するのが率先避難者の存在です。
率先避難者が避難を呼びかけることで発生している事の重大さを正しく認識させられるので、周囲が避難を始められ、結果的に多くの命を救うことができます。
リスク情報を収集する
正常性バイアスが働く原因には、情報の不足によって状況を十分に理解していないという理由もあげられ、自然災害などのリスク発生時は情報収集によって状況を正しく把握し、すみやかに初動対応を開始する必要があります。
しかし、企業の場合は自然災害などのリスク発生時は混乱した状況の中で安全確保などの対応をしながら初動対応のための情報収集をしなければならないので、上手くいかない場合もあるのです。
そこで今回ご紹介したいのが、自然災害や事故などリスクの早期検知に役立つ弊社のFASTALERTです。
BCPや防災対策などを目的としてすでに全ての民放キー局や大手報道機関、一般企業、自治体で幅広く導入されているFASTALERTは次のメリットがあるため、迅速なリスク情報の把握はもちろん、スムーズに防災対応を開始することができます。
・災害など“報道前”のリスク情報がAIによってほぼリアルタイムで検知できる
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例えばFASTALERTでは2019年9月5日の京急脱線事故を事故発生から1分後に第1報を検知・サービス利用者に情報提供していましたが、これはテレビの報道よりも1時間15分ほど早かったことが分かっています。
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※FASTALERTは、企業・自治体のお客様専用のサービスとなります。
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最後に
災害発生時に避難などの防災対応を十分に行なっていれば被害を防げたのにも関わらず、正常性バイアスの働きによって対応できない場合があります。
災害は、いつどこで発生するのか分からず、何が起きるのかも予測できません。
正常性バイアスは人間の基本的な心理的防衛反応なので、どのような方にでも発生します。
しかし、災害による損失を最小限に抑えるためには、正常性バイアスという色眼鏡をかけていることにいち早く気づき、状況を冷静に把握することが大切です。
今回の記事を参考に過度な正常性バイアスによる被害の拡大を防ぐため、平時から十分に対策しておきましょう。