SNSに投稿された41枚の写真、18個の動画で見る2020年7月九州南部豪雨(熊本県人吉市、芦北町を中心に)

「50年に1度」と表される記録的豪雨に見舞われた九州南部、とくに熊本県・鹿児島県の各地では、甚大な被害に見舞われました。

気象庁が熊本県南部16市町村(八代市、人吉市、水俣市など)と鹿児島県北部4市町(阿久根市、出水市など)に対し、数十年に一度の重大な災害が予想される「大雨特別警報」を出したのは明け方の午前4時50分でした。

そもそも「大雨特別警報」とは、台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想されると発表されます。具体的には、5キロ四方に分けた区画の地中の雨量から土砂災害の危険度を示す「土壌雨量指数」と、3時間降水量の両方が「50年に一度の数値」を超えた区画が、まとまった範囲におおむね10程度まとまって出現すると予想され、かつ雨が降り続くと予想されると発表されます。

今回特別警報が出た地域では、4日午前3時半から午前4時にかけて、一気に区画が広がり、あっという間に「大雨特別警報」が発表されました。それほどの雨の勢いだったのです。

当日の状況を、SNS上ではどのように伝えていたのでしょうか。被害から2日経った6日、JX通信社では投稿を通じて「状況の見える化」を行いました。

前日〜当日深夜の鹿児島県の様子

JX通信社では、豪雨1日前の午前10時前に熊本県八代市で発生した交通事故を、偶然捉えていました。空の様子も写っています。曇り空で所々に水たまりもありますが、これから僅か20時間後に大雨特別警報が出るとはとても思えません。たいていの災害は「明日来ると思わなかった」ものなのかもしれません。

気象庁のアメダスを見る限り、先に強い雨が降り出したのは鹿児島県です。21時半過ぎには「川が溢れそう」というコメントや、鹿児島市が発出したアラートに関するTweetが発見されました。

鹿児島県鹿児島市の隣に位置する姶良市や、近隣のいちき串木野市に住む住民の方からは、豪雨の状況を知らせる動画が投稿されました。動画を見る限り、かなり激しい雨だとわかります。

さらに、鹿児島県の薩摩半島を流れる甲突川(二級河川)の水位が上昇し、市内に避難勧告のアラートが鳴ったことがわかります。

日を超えて深夜0時半、姶良市のお隣の霧島市内交差点を撮影した投稿を発見しました。冠水し、内水氾濫が発生したようにも見える道路上を往来する車の姿と、それを撮影する人の姿が映っています。

深夜〜早朝にかけて降り続く雨

熊本県天草市と思われる投稿で、午前2時35分時点で豪雨により冠水し始めたとわかります。ちなみに気象庁の天草市牛深測候所・特別地域気象観測所によると午前2時台の降水量は47.5mmです。

ちなみに「降水量1時間1mm」は1m2の面積に1mm、100cm×100cm×0.1cm=1000cm3=1L分を意味しています。すなわち降水量47.5mmとは、1m2の面積に47.5L分の雨が降ったのです。そんなに水が降ると土砂は滑るだけでなく、高いところから低いところへ猛烈な勢いで流れ落ちます。

夜が明けようとするにつれ、雨は酷くなります。ちなみに先程の牛深測候所・特別地域気象観測所では、午前3時台は72.0mm、午前4時台は84.5mmの降水量を記録しました。

いよいよ午前4時50分、大雨特別警報が発表されます。

5時台には既に芦北町で大規模な浸水・冠水被害が発生していたと思われます。

芦北町内に設置された気象庁の田浦地域気象観測所で記録された降雨量は3時台に69.0mm、4時台に62.5mm、5時台に55.5mm、6時台に72.5mmと約4時間で250mmもの降水量が記録されました。

深夜に渡って降り続いた雨が、太陽の光で街中を照らされるようになり、人々が起き始めるようになって熊本県、鹿児島県に与えた被害の規模が見えるようになってきました。

相次ぐ土砂崩落・橋げた水没事故

午前6時、熊本県葦北郡津奈木町で土砂崩れが発生したことを知らせるTweetを発見しました。それから1時間後、同じ投稿者が撮影した写真から水分を随分と含んだ土砂が、さらに崩れ落ちている姿が露わになります。

他にも各地で土砂崩れに関する投稿が相次ぎました。水分を多く含んだ土砂は、たとえその時点で雨が降っていなかったとしても、ひょんなことから大きく崩落します。「雨が止んだから安心してはいけない一例」です。

さらに、天草市魚貫町で道路が陥没した写真が投稿されました。山自体が削れ落ち、道路の断面が露わになっています。

他にも、主に球磨川にかかる鉄橋や道路の崩壊に関する投稿が相次ぎました。

https://twitter.com/ajisai6_11puni/status/1279238734777430017

大規模な浸水被害が各地で発生

日が登り始めるにつれ、熊本県南部を中心に浸水・冠水被害を知らせる投稿が相次ぎました。車が船のようにプカプカ浮かぶ投稿から、家の隙間を濁流が流れ落ちる映像まで、被害の深刻さがあらわに伝わってきます。

急激に上がる球磨川の水嵩

4日、地元に帰省されていた矢上雅義衆議院議員は自身のTwitterアカウントで積極的に情報発信されています。中でも、人吉駅前の球磨川にかかる水ノ手橋を定点観測され、徐々に水位があがる光景から、状況の過酷さが伺えます。

30分〜1時間間隔で投稿される映像から、球磨川の水嵩のおおよそが推察されるのではないでしょうか。

避難所にも行けない、火事も消せない

降り続いた豪雨のせいで道路が「川のように」変わってしまい、避難しようにもできない人が相次ぎました。今回は午前4時50分という早朝に大雨特別警報が発令されたため、寝ていて気付かず、起きたら外に出れなかった…という人もいるようです。

また、近隣の公共施設に避難しても、今度は「出るに出られない状態」に追い込まれてしまった例、他にも避難所の体育館が浸水して避難できない例が中にはあるようです。さらには病院に続く道が冠水して、球磨病院に行けなくなってしまったという報告もTwitterにあがりました。

また、11時40分過ぎには大規模な浸水・冠水被害のあった芦北町にある工場で火災が発生しました。工場自体、またその周辺が浸水しているため消防車が近付けず、5時間後の16時10分にも煙が出ていることがTwitterの投稿で確認できます。

豪雨の後、残された爪痕

雨が止み、泥水も引いていった後、街中に残るのは大量の汚泥と水が山中から運んできた土石です。中には、どこからともなく流れ着いた自動車もあって、翌日からの復旧の困難さを伺えます。

https://twitter.com/yururi__03/status/1279272768299663360
https://twitter.com/tkstmac/status/1279282130795630592
https://twitter.com/kyon96950697/status/1279351374434586624

SNSは第2の119番である

言葉で表現するよりも、写真や映像が何百倍も早く・大量に・正確に伝わる場合があります。例えば今回のような災害時、気が動転して上手く答えられないかもしれません。

私たちJX通信社が紹介した41枚の写真、18個の動画は、既に119番など何らかの通報があったかもしれません。しかし水嵩が上がった、橋が崩落した、山が土砂崩れを起こした、そうした様々な被害状況を「見てすぐ伝える力」がSNSにはあります。

SNSは「第2の119番」とも言える能力を備えています。世の中に広く知らしめるだけでなく、何が起きているかをつぶさに見せてくれます。こうした情報を瞬時に拾うテクノロジーを活用して、地図にマッピングさせ、現場に行かずとも被害状況を可視化することも容易です。

SNSなどテクノロジーを活用しつつ、迅速な被害復旧がなされることを願います。

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