『新型コロナ時空間3Dマップ』流行推移の詳細を三次元的に分析する東北大学×JX通信社の共同プロジェクト

2020年12月現在、東京を中心に北海道から沖縄まで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の再拡大が始まっています。この状況を受け、JX通信社と東北大学大学院環境科学研究科の中谷友樹教授および永田彰平先生は共同で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大状況を分析する新たなプロジェクトを開始し、『新型コロナ時空間3Dマップ』を開発しました。

『新型コロナ時空間3Dマップ』は、JX通信社が独自に収集している※感染者数データを活用し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大状況を時系列かつ俯瞰的に確認ができるように開発したマップです。このマップを読み解くと、感染がいつの時期に、どのようにして広がったのか視覚的に分かります。

この記事で、日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大状況と三次元マップの読み解き方について東北大学大学院環境科学研究科の中谷友樹教授が分かりやすく解説を行います。

※新型コロナ時空間3Dマップの情報源は、JX通信社が提供する速報ニュースアプリ「NewsDigest」(無料)の「新型コロナ感染事例マップ」です。

あなたの近隣で感染事例が報告された施設の情報を地図でピンポイントにチェックすることが可能です。

「新型コロナ感染事例マップ」はNewsDigest内「コロナ・防災」タブよりご利用ください。

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東北大学大学院環境科学研究科(東北大学大学院理学研究科兼任)中谷友樹 教授ご紹介


専門は地理情報科学、空間疫学。1997年東京都立大学大学院理学研究科地理学専攻博士課程修了,博士(理学),立命館大学文学部専任講師、助教授、准教授、教授、英国リーズ大学・ニューカッスル大学・シェフィールド大学客員研究員、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン客員教授、立命館大学歴史都市防災研究所副所長(兼任)等を経て,2018年4月から現職。

東北大学大学院環境科学研究科博士後期課程 永田彰平先生ご紹介

専門は地理情報科学、空間疫学。2015年立命館大学大学院文学研究科修士課程修了,ESRIジャパン株式会社を経て現在に至る。





新型コロナウイルス感染症の流行推移マップについて

2019年の暮れに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が中国で報告されて以降、瞬く間に世界中へと広がりました。現在ではインターネットで配信される流行状況のマップをみることで、日常的な生活での感染リスクを理解し、予防的な行動をとるきっかけとなることも期待され、世界の各地で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染状況マップが配信されるようになっています。日本でも2020年1月に最初の患者が報告されてから、現在に至るまで、全国的な流行が続いています。この状況を踏まえて日本でも都道府県別の感染者数を示すマップが企業や個人によって公開されています。

感染症マッピングの歴史と粒度

このような感染症の患者発生をマップに示す作業は、流行の状況からその原因を探る疫学の基本として、19世紀から長く繰り返されてきました。中でも19世紀中頃にコレラ患者の分布からその流行源と思しき水道栓の存在を指摘し、その水道栓を止めたイギリスの医師ジョン・スノウ氏の取り組みは有名です。

ただ、日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行を示すマップの多くは都道府県別に集計されており、私たちの生活する地域の流行状況を理解するには粗すぎるように思われる方も多いのではないでしょうか。同じ県の中でも活動する範囲は人それぞれですし、県の境界付近で暮らす人にとっては、それほど意識せずに普段の暮らしで県境を超えているはずです。この感染症は地域の中でどのように広がり、どういった場所で感染が続いているのか、その実態はどうなっているのでしょうか。

一元的に患者発生情報を把握できない公的な情報

日本では指定感染症に定められているため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染を診断した医師は感染者の情報を保健所へ届け、国がその結果を集約する仕組みになっています。この仕組みによって保健所単位での患者数と分布図が日々、全国的に公開されても良いように思いますが、残念ながら現状では機能していません。代わりに、個々の患者発生の情報は、それぞれの自治体で公表されてきました。

ただ、その報告の仕方は自治体によって様々で、居住地についても「XX地方」のように範囲が明確でないもの、プライバシーなどを配慮して公開しないものなど一貫性に乏しく、これらをまとめるには多大な労力を必要としています。

施設側の感染報告とJX通信社の新型コロナ関連データ収集の取り組み

こうした公的な患者発生情報とは別に、商業施設や飲食店、病院、オフィスなどの施設が、その施設の関係者の感染発生についてインターネット上で発表していることが多くあります。過去の訪問者に感染リスクがあったことを知ってもらうため、あるいは地域での感染発生について注意を促すため等、様々な理由で独自に公開されているものです。

この情報は、診断された感染を網羅するものではありませんが、施設はその名称から所在地が明確に確認できますし、感染が生じた、あるいは生じうる場所を知る重要な情報となります。

情報を公開している施設を予め特定することは難しく、またその掲載の様式も多種多様ですが、これまでに様々なリスク情報の収集を行なってきたJX通信社は公的機関からの発表情報に加えて、企業や施設が公開する感染発生情報の収集も進めていました。

また、JX通信社が運営するニュース速報アプリ「NewsDigest」上で直接ユーザーから情報提供を受けるなど独自の情報収集も行っているうえ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の情報を追う専属チームが24時間体制で数値を更新しているためリアルタイム性が高い情報だと分かりました。(※2020年12月2日現在、「NewsDigest」ユーザーからの情報提供数は累計で3万件を突破)

そこで、JX通信社にデータ提供の協力をお願いし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新しい感染状況マップの開発を共同で試みました。

『新型コロナ時空間3Dマップ』の解説:地域別に流行の「雲」をみる

施設からの感染発生情報は、施設の所在地の地理的座標と感染報告がされた日付の時空間的な位置をもった情報です。これを利用することで、公的な情報ではなし得なかった地理的に詳細な感染発生の分布図を、時期ごとに描くことができます。ただ、流行がどのように広がってきたのか、どの地域で継続的に流行が続いているのかを知るには、時系列的に連続した感染発生をみることが望ましいのです。

そこで、水平方向に地理的な広がり(すなわち地理的座標/日本地図)を、垂直方向に日時(下から上へと時間が進む時間座標)を設定した3次元の空間に、感染発生施設の密度の高さを色別で「雲」のように表示する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の時空間マップを開発してみました。

以降、このマップ上の赤色、青色、灰色の部分を「雲」と呼んで説明します。

(『新型コロナ時空間3Dマップ』関西圏版 https://nakaya-geolab.com/covid19-stkd/kansai/

現在、首都圏版(関東版)と関西版のみを下記の通り公開しています。以下ではマップの読み解き方を詳しく説明します。

・『新型コロナ時空間3Dマップ』首都圏版:https://nakaya-geolab.com/covid19-stkd/tokyo/
・『新型コロナ時空間3Dマップ』関西圏版:https://nakaya-geolab.com/covid19-stkd/kansai/

『新型コロナ時空間3Dマップ』の読み解き方

この3Dマップの「雲」については、3種類の色で生活圏(周囲半径4kmを想定)の中での感染状況を表しています。

赤色の雲:毎日5か所以上の施設で感染発生がある状況
青色の雲:毎日感染が1つ以上の施設
灰色の雲:灰色は4日に1施設程度の発生に対応

いずれの色であっても「雲」が縦に伸びていれば、感染がその地域でつながっている可能性を示唆します。

(『新型コロナ時空間3Dマップ』首都圏版 https://nakaya-geolab.com/covid19-stkd/tokyo/

マップを横から見ると、まるで積乱雲のように「流行の雲」が縦方向に伸びている様子が分かります。赤色や青色で示される高リスクの核となる流行地区は大規模な繁華街を有する都心付近にあります。
上記のマップは『新型コロナ時空間3Dマップ』首都圏版を斜め上方向から見た図です。

5月末まで実施されていた緊急事態宣言の影響で流行が一時下火となった6月頃には、「雲」の多くは霧散しています。しかし流行の核が東京の都心にだけは残っていた様子も分かります。第1波と第2波のいずれにおいて、こうした地区が起点となって感染が郊外へと広がっていった様子からも、流行の核となる地区への対処が重要であることは明らかです。

なお次の図は『新型コロナ時空間3Dマップ』首都圏版を上から見た図です。東京都を中心に、主要な鉄道沿線に沿って他の地域に広がっている様子もよく分かります。

(『新型コロナ時空間3Dマップ』首都圏版を上から見た図)

一方、流行の拡大とともに、郊外にも駅前の繁華街を中心に高リスクな場所が出現するようになり、それらが拡大しないように注意する必要もあります。

このマップでは視点を自由に変えること、さらには市区町村の境界や主要な鉄道路線などを示す「地面」に相当する2Dマップを縦方向に自由に動かして最近の状況に注意を払うこともできます。 次の図は11月16日の位置に「地面」を動かして、11月後半の流行状況を示したものです。

(『新型コロナ時空間3Dマップ』で最近の状況をハイライトした状態(2020年11月後半)

流行が拡大するにつれ、感染の発生そのものは多くの地域で避けがたいものになりますが、その感染が地域の中でつながらない(縦に伸びる「雲」にならない)ようにすること、感染地域が拡大しない(「雲」と「雲」がつながらない)ようにすることが必要です。

時空間的に詳細な感染状況のマップは、重点的な対策先などの対策に加えて、外出先の判断など市民の予防行動を支える重要な情報にもなると期待されます。

実際のマップは下記のページでご覧になれます。スマートフォンでは1色の雲しか反映されない場合もありますが、その際はお手数ですがPCからご覧ください。

スマートフォンでは画面の左下にあるレイヤーの選択でどの色の雲を表示するか選ぶこともできます。いつでも、どこでもスマートフォンでスムーズにご覧いただけるようさらなる開発を進めております。

・『新型コロナ時空間3Dマップ』首都圏版:https://nakaya-geolab.com/covid19-stkd/tokyo/
・『新型コロナ時空間3Dマップ』関西圏版:https://nakaya-geolab.com/covid19-stkd/kansai/

おわりに

このように地理的に詳細な感染発生の情報を、時空間の3Dマップにまとめることで地域の流行状況や感染リスクを具体的にイメージすることが可能となります。

Withコロナ時代に突入するなかで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を意識しながらも通常の生活をする必要があり、ますます地域の新型コロナ感染状況の情報を具体的に確認することが重要になっていきます。

これを可能とする個別に施設から発信される情報は、とても貴重な情報です。それは、感染が発生したことを公表する社会的な意義を明らかにするものでもあります。 今後は、さらに専門的な分析を重ね、感染発生が持続する地域の特徴を明らかにするとともに感染発生の「天気」を予報するような仕組みへとつなげていく予定です。

また、NewsDigest上での情報提供もお待ちしております。
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