AIやビッグデータで、新型コロナウイルスとどう戦うか? 報道ベンチャー・JX通信社の4つの取り組み

1.AIの力で、リアルタイムで正確な感染者数の統計を実現

日本国内の新型コロナウイルスの感染者数などのデータは、厚生労働省が1日に1回発表しています。全国の自治体が上げた感染者に関する情報を厚労省が取りまとめるながれで発表されているのです。

しかし、現状では厚労省と自治体の間の疎通や、厚労省内の確認作業等により、概ね1日遅れで感染者数、死者数のデータが発表される形になってしまっています。

結果、当社やNHKをはじめとする報道各社の発表するデータと、厚労省の発表データに大きな差が発生している現状があります。

新型コロナウイルス感染症の陽性、陰性を判定するPCR検査を行っているのは、基本的には自治体の保健所や衛生研究所などです。

このため、自治体の発表をカウントしていかないと、リアルタイムで正確な統計にすることは難しいという実情があります。しかし、この自治体発表を追うにも大きな落とし穴があるのです。

自治体は全国に1700以上あり、それぞれがバラバラな方法でコロナ関連の情報を発信したり、しなかったりします。発表する情報の種類も違えば、粒度もバラバラ。情報が曖昧だったり詳しかったり、よく言えばバラエティ豊か、悪く言えば不統一なのが実態です。

さらに言えば、発表のタイミングさえもバラバラのため、いつどこから感染者数の発表があるかも知れません。また、1人の感染者の情報が県と市両方から発表されるといったことも日常茶飯事です。

こうした状況で、一般の人が、行政の発表だけを眺めて日本国内の正確な感染状況を知ることは難しいことは容易にご理解いただけるかと思います。

そこで、JX通信社では、2月16日から新型コロナウイルス関連統計の提供を開始しました。

JX通信社のコロナ統計では、感染者数や死者数などの情報は、自治体発表直後、早ければ数分以内に更新されます。数を単に足し算するのではなく、1人ずつ個人ごとに管理しているため、県と市で重複するといった心配もありません。

こうしてまとめたデータを見やすい地図やグラフといった「インフォグラフィック」で表示しているのが「JX通信社 国内最新感染状況マップ」です。

このようなインフォグラフィックの取り組みは、今でこそテレビ局や新聞社など各メディアのWebサイトに広がっていますが、2月16日の時点では他にはほぼ存在しませんでした。

国内で最初期に始めたこともあり、これまでに累計500万人以上が閲覧、3000万以上のページビューを記録しています。

この統計データは、上記のインフォグラフィックだけでなく、API形式でSmartNews(スマートニュース)、NewsPicks(ニューズピックス)などの他の大手ニュースアプリ、プラットフォーム各社にも積極的に提供しています。

多くの人が正確な感染状況を知り、感染予防や行動抑制に動くことが重要だからです。

SmartNews上で提供するJX通信社のコロナ統計(スクリーンショット)

また、学術機関にJX通信社が蓄積している新型コロナウイルス感染症発症者のデータを提供し、統計的に感染の広がり方の分析や今後の展開の予測を行う研究にも活用いただいています。

では、なぜ正確な統計をリアルタイムに提供できるのでしょうか?実は、そこにAI(人工知能)を核とするテクノロジーの力があるのです。

JX通信社は、全国の報道機関や官公庁・自治体、インフラ企業等に緊急情報を配信する、シェアNo.1のAI緊急情報サービス「FASTALERT」(ファストアラート)があります。

このFASTALERTは、SNSやWebの情報をAIで24時間365日監視して、災害や事故、事件などの緊急情報を集める仕組みです。

この仕組みを活用し、国や全国の自治体、地元メディアの報道などをウォッチしているのです。新たな感染者の情報をリアルタイムに(時には自治体の発表や報道よりもかなり前に)知るとともに、発表後の確認作業もスムーズにしています。

もちろん、掲載前の確認は人間のチームで責任を持って行っているため、情報は速くて正確なものになります。

2.未確認の感染者の情報をつかむ:感染症関連情報の収集とデマの排除

もちろん、AIは統計だけに活用しているわけではありません。FASTALERTでは、新型コロナウイルスをはじめとする感染症に関連するSNSの情報も集めており、毎日、多数の情報を報道機関などに配信しているのです。

例えば、ある人が「近所で感染者の情報がある」という話をSNSに書き込んだ場合、FASTALERTはその投稿を概ね数十秒以内に検知します。そのうえで、情報の内容や正確さについて解析を行い、FASTALERT上で配信します。

その時点で、FASTALERTを閲覧している自治体や報道機関などが、その情報の事実確認や対応に動きはじめることができるのです。

実際に、ある大手企業社員の新型コロナウイルス感染が判明した事例では、FASTALERTが報道のおよそ1時間前にその情報をキャッチしていました。

つまり、FASTALERTがキャッチした情報をもとに、テレビ局を中心とする報道機関が当該企業に対する確認取材などに動き、結果、発表・報道に至ったというながれです。こうした情報のながれは、実は感染症以外でも日常的にあります。

FASTALERTは緊急情報サービスとして、幅広い情報を取り扱ってします。わかりやすいところでは災害、事故、事件などですが、それ以外にも、季節の話題や天気・気象に関する情報、企業の不祥事や風評被害に関する情報、その他デマ・フェイクニュースの話題なども収集、配信しています。

SNSからこうした「価値ある情報」を見つけ出して、報道や防災などに活用しようという試みは、東日本大震災以降、様々な会社や研究機関によって行われてきました。その中で、最後発で参入したのがFASTALERTだったのです。

しかし、その圧倒的な速報性や情報の精度、高い網羅性(取り漏らしのなさ)が支持され、2016年9月のサービスリリースから約半年後の2017年4月には、全ての民放キー局とNHKに導入されるに至りました。リリース約半年で、業界標準のAI緊急情報サービスに成長したのです。現在では、全国の大半のテレビ局や新聞社がFASTALERTを導入しています。

皆さんも、テレビでニュース番組を見ていて「視聴者提供」というクレジットのついた映像を目にすることも多いのではないでしょうか。あの映像は、実は殆どがこのFASTALERTによって発見されているのです

テレビ局の中には、FASTALERTをチェックし、取材の準備をするための専門の部署を置いている会社もあります。

こうした経緯もあり、今日JX通信社は、共同通信、日経グループ、テレビ朝日、フジテレビ、朝日放送の報道5社グループが資本参加する「新しい通信社」としてのポジションを確立しているのです。

FASTALERTは、報道機関向けのサービスとして誕生しましたが、現在はそれに限らず、鉄道や電力、通信などのインフラ企業、政府や自治体などの公共セクターでも広く採用されています。

特に、SNSの情報を防災や減災、BCPに活かす「ソーシャル防災」「ソーシャル危機管理」の動きの広がりとともに、FASTALERTの活用は急速に広がっています

3.新型コロナをめぐる企業の動向や有識者の発信、正確な報道をチェック

FASTALERTで提供している新型コロナウイルス関連情報は、こうした感染症関連情報や統計だけではありません。

コロナをめぐり、世の中や企業がどう動いているのかをひと目でチェックすることができる機能や、有識者・専門家の発信をチェックして感染状況を正確に理解する助けになるような機能もあります。

これらの機能は、FASTALERTのライセンスを持っている企業だけが利用することができますが、実は、一般の方にも近い形で活用いただけるものがあります。

それが、ニュース速報アプリ「NewsDigest」(ニュースダイジェスト)の「新型肺炎」タブです。

NewsDigestは、JX通信社が提供している、無料で誰でも利用できるニュース速報アプリです。iOSとAndroidの両方に対応しているため、基本的にはスマートフォンを使っている人であれば、ほぼどなたでも利用することができます。

2019年にはGoogle Play「ベストアプリ2019」生活お役立ち部門賞を受賞するなど、情報のライフラインとして広く支持を集めている速報アプリです。

このNewsDigestでは、新型コロナウイルスの感染が拡大する前から、コロナの情報発信に力を入れています。その象徴が「新型肺炎」タブです。

「新型肺炎」タブでは、コロナに関連するニュースだけを集めて閲覧することができます。

SNSには未確認でそのまま鵜呑みにはできないような情報や、デマも沢山流されていますが、NewsDigestでは既に確認され、ニュース記事になったものだけが掲載されているため、そうした心配はありません。

また、先に紹介したインフォグラフィックの特設ページ「JX通信社 国内感染状況マップ」はこのNewsDigest内に設置しており、最新の感染者数などのデータを地図やグラフで分かりやすく紹介しています。

NewsDigestやFASTALERTで提供しているのは、これらだけではありません。

4.あなたの近くにもある「感染事例のある場所」をマップで確認できる

NewsDigestには、感染事例のある場所を、具体的なビル名・施設名のレベルで細かく網羅した「感染事例マップ」が掲載されています。

国や自治体、企業の公式な発表をAIで収集・検知し、人間のチームで確認したうえで、感染者の出入りが確認された施設の情報をマップに掲載しているのです。

現状、こうした感染事例のある施設の情報は、自治体などによって公表されているにも関わらず、整理が十分行き届いていない現実があります。

そもそもなぜこうした情報が公表されているのかといえば「感染リスク」を広く知ってもらい、濃厚接触者を探索するとともに、行動抑制を呼びかけるためです。

実例でその意義をご紹介します。大阪でライブハウスが大きなクラスターと化した際、大阪府はライブハウスの名前やライブイベント自体の名称、日時までを詳細に公表し、ライブに参加した人は最寄りの保健所等に名乗り出るよう広く呼びかけました

しかも、この呼びかけは知事自らが記者会見やテレビ出演、Twitter等を駆使して行ったのです。結果、全国からライブ参加者が名乗り出て、なんと8都府県からこのライブハウス関連の感染者が発見されるに至りました。

結果「その先」に感染が広がることを防げたのです。まさに、情報公開がクラスター対策に大きな威力を発揮することが明らかになった事例でした。

しかし、自治体の情報発信能力には大きな格差があり、公表したからといって市民に情報が行き届くとは限りません。

どこでも大阪府のように広く域内の市民に情報を届け、ときに全国規模で呼びかけるような情報発信ができるわけではないのです。

そこで起きてくるのが、誤った情報が地域内でオフラインで広まってしまう、いわゆるデマ、根拠のない噂の問題です。

実際に、ある特定の感染事例のある施設の周辺で、その施設とは全く無関係な会社や店舗が「感染者を出した場所」として広まってしまう、といったケースがありました。

要は、自治体や企業の情報発信が行き届かないがために、近隣の無関係な企業や施設に対する根拠のない噂やデマ・フェイクニュースの拡散が起きてしまっているのです。

NewsDigestでの感染事例マップの掲載は、そうした風評被害、デマを防ぎつつ、自治体などの情報発信をサポートするという意図があります。

NewsDigest感染事例マップ(画像は一部加工しています)

また、海外では感染経路を追跡し、感染者と接触した可能性のある市民に通知を送る機能を持つ、いわゆる「追跡アプリ」を政府や研究機関などが提供し、感染経路の追跡に成果を挙げている事例もあります。

これらは、政府が個人のプライバシーを一定程度犠牲にする形で、感染拡大を防ぐ手立てとして使っている手段ですが、日本の法制度のもとでは、こうした追跡アプリを実効性ある形で普及、運用させられるかどうかは未知数です。

そこで当社では、市民が自ら身近な感染事例のある場所をチェックして、感染事例が報告された日やその前後にその場所に立ち寄ったりしていないかを確認できるようにしたいと考えました。

公開情報をベースとしたマップを見てもらう方法であれば、私権の侵害を防ぎつつ、ユーザー個人のプライバシーに踏み込むこともない形で、感染・接触のリスクを知ったり、行動抑制につなげることができます

情報が長期間Web上にのこることを防ぎ、当社が消すべき時に情報を消せるよう、あえてアプリ内のみの公開にとどめている点もポイントです。

新型コロナウイルスの身近な感染事例のある場所をチェックしたい時は、ぜひNewsDigestをダウンロードして利用してみてください。

AI、ビッグデータを武器に新型コロナウイルスと戦うJX通信社のテクノロジー

ここまでご説明してきたように、JX通信社は報道ベンチャーとして新型コロナウイルスと戦う幅広い取り組みを進めています。

リアルタイムな統計のインフォグラフィック提供や大手ニュースアプリ等へのAPIによるデータ提供、未確認の感染者の探索やデマ・フェイクニュース排除への取り組み、感染事例報告施設のマップ提供など、そのアウトプットは多岐に渡っています。

こうした取り組みは、自然言語処理や機械学習、画像解析といった当社の技術的な強みがあってこそ可能となっています。

JX通信社は、報道ベンチャーとして、報道分野に特化した取り組みをしています。しかし、通信社という名前でありながら記者は1人もいません。

その代わり、社員の約半数をエンジニアが占めている会社です。やや硬い社名とは裏腹に、実情は純然たるテックカンパニーなのです。

そうした組織でなぜ報道分野に取り組むのか。その狙いは「報道の機械化」で、ニュースを持続可能なビジネスにしていくことにあります。この考え方については、当社代表の米重によるトップメッセージが詳しいため、こちらをご覧ください。

JX通信社は、これからも新型コロナウイルス感染症と戦う、新しい取り組みを更に進めていきます。

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